廃墟となったロシアの北極研究所に住み着いたホッキョクグマたちの日常
廃墟となったロシアの北極研究所に住み着いたホッキョクグマたちの日常

廃墟となったロシアの北極研究所に住み着いたホッキョクグマたちの日常

北極圏のロシア領、チュクチ海に浮かぶ「コリュチン島」はかつて、ソ連時代に極地研究所があった場所だが、1990年代初頭に放棄され廃墟となった…

北極圏のロシア領、チュクチ海に浮かぶ「コリュチン島」はかつて、ソ連時代に極地研究所があった場所だが、1990年代初頭に放棄され廃墟となった。そこに住み着いたのは、ホッキョクグマたちだ。 ロシア人写真家のバディム・マホロフ(Vadim Makhorov)氏は、2025年晩夏の北極の太陽の下、施設の点在する建物に出入りするクマたちの様子をドローンで撮影した。 人間が勝手に住み、勝手に捨てていった場所だが、気候変動によって海氷が減少し、行き場を失くしたホッキョクグマたちにとって、風や雨をしのげる、ちょうどいい隠れ家となっている。

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廃墟となったソ連時代の北極圏研究施設

チュクチ海に浮かぶコリュチン島は、ユーラシア大陸の最東端に位置するチュクチ半島の北岸から、わずか約11kmの距離にある小さな島だ。島の全長は約4.5km、最大幅は1.5kmほどで、北極圏に位置し、周囲を荒れた北極海に囲まれている。 この島の西部には、1943年にソビエト連邦(現ロシア)の科学者たちが建設した極地研究施設があった。ここは、風速、気温、氷の状態などを観測し、北極海航路を支える気象観測所として稼働していた。 だが1991年のソ連崩壊を境に研究活動は停止し、翌1992年には施設が完全に放棄された。人の姿は消え、建物だけが島に取り残され、30年以上が経過し、廃墟状態にあった。 ちなみに島の南端には小さなチュクチ族(シベリア北東部の先住民族でアイヌから最も近縁なアジアの民族)の集落があったのだが、1987年時点で村はなくなり、島全体が無人島となっている。

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ドローンがとらえた、廃墟を住処にするホッキョクグマたち

2025年の晩夏、ロシア人写真家バディム・マホロフ(Vadim Makhorov)氏が、観光客グループとともに北極海を巡るクルーズに参加した際、コリュチン島を訪れた。 彼は廃墟となった研究施設をドローンで撮影していたところ、建物の間を歩き回る複数のホッキョクグマの姿を発見した。 撮影された映像には、20頭以上のホッキョクグマが建物の出入り口から顔を出したり、のんびりと寝そべったり、ドローンに興味を示して近づこうとする様子などが映っていた。 恐れるどころか、むしろ遊び相手のように接しようとする個体までいた。 「クマたちはこの場所を避難所のように使っています。彼らにとっても“家”は居心地のいいものなのかもしれない」と、マホロフ氏は自身のInstagramで語っている。 気象観測所として人間が使っていた場所が、今では北極の捕食者たちにとっての隠れ家へと姿を変えていたのだ。

氷を失ったホッキョクグマたちの新たな選択肢

本来、ホッキョクグマは海氷の上でアザラシを狩りながら暮らす、北極圏を代表する頂点捕食者だ。しかし近年、気候変動の影響で海氷が年々減少しており、夏場には十分な狩り場が確保できなくなっている。 氷の代わりに選ばれたのが、陸地での生活だった。特に北極圏の島々では、海から上がってきたクマたちが人間の残した建物や廃墟を利用するケースが報告されている。 2022年、別のロシアの写真家が、コリュチン島を訪れドローン撮影した時の様子は以前カラパイアでも紹介した。 マホロフ氏は、数年前にもこの島に漂着したクジラの死骸に200頭以上のホッキョクグマが集まり、争うことなく餌を分け合っていた様子を撮影した経験がある。 餌が十分にあるとき、彼らは思いのほか社交的で、集団で過ごすこともあるという。

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気候変動の影響で個体数が減少しているホッキョクグマ

ホッキョクグマは一つの種であるが、生息域が北極圏全体に広がっているため、研究者たちは複数の個体群に分けてその動態を追跡している。個体群とは、地理的に分かれた地域に生息し、互いに行き来しやすいグループのことである。 今回、ホッキョクグマが観察されたコリュチン島周辺は、そうした個体群のひとつであるチュクチ海個体群に属すると考えられているが、個体群の境界は絶対的なものではなく、クマたちの移動や気候環境の変化に応じて、今後再定義される可能性もある。 国際自然保護連合(IUCN)によれば、ホッキョクグマはレッドリストにおいて「脆弱(Vu)」と分類されており、気候変動による海氷の減少、海面上昇などの理由で、将来的に絶滅のリスクが高まっているとされている。 願わくば、この島が二度と人間に利用されることなく、ホッキョクグマたちの聖地として、温存されていってほしい。

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この記事への コメント 31件

アイスキャンディーでも売りますか シルバニアならぬシベリアファミリー シベリアより北なんだよなぁ… 動物園での写真ではそれほど大きく見えませんが、家との比較ですと間口に対してのホッキョクグマの身体の大きさがとてもわかりやすく、とんでもなくでかい!という感想を禁じ得ません 強風がしのげるだけでも生存確率あがるからなぁ・・・そら動物でも使うわ ホッキョクグマはあまり群れで生活しないイメージがあったから驚いた まだ若いクマたちなのかな ここでカフェを開こう(提案) 結構くつろいでますね。 人間だけでなくあらゆる生き物にとっても、生きづらい世界になってしまったのかな。 数頭かなと思っていたら20頭以上!! もはや村ですね 海氷がなくなって申し訳ない どうか無人島でたくましく生き延びてくれ ちゃんと、玄関から出入りするんだね ホッキョクグマさん適応能力高くてホッとした。幸せに暮らしてほしい。 グーグルマップの口コミぇ・・・・クマもネットするのだろうか? 24時間ライブやって欲しいわ この映像だけだとすごく微笑ましいんだけど 北極圏に住めるところがなくなってきたらそのうち ニンゲンの家を奪えばいいんじゃん! になりそうでちょっと怖い くうねるあそぶの体現者 これだけ見るとほのぼのだ けどヒグマよりパワフルなんだよな…… ドローンは虫くらいにしか思っていなさそう まったりしてて良きかな 窓から身を乗り出す感じなんてまさにリアルシルバニアファミリーそのもの! でも理由が理由だけに簡単に可愛い❤️と言い切れないですね……。

陸で暮らす期間が増えて、本来の海氷の上での暮らし方を忘れてしまわないだろうか。 陸に適応した結果、防寒機能が高い毛質を失ったりとか…。 玄関に佇むクマさんはとても可愛いけど、早く彼らに海氷をお返ししたい

ここだけ見ると本当におとぎ話みたい くまさんの村とかそんな世界アタゴオルとかにありそう ノースサファリパークがたどる未来かな? 無人の人工的建造物にこんな大きな野生の動物がいるとディストピア感がすごいな。廃墟好きには惹き込まれる写真だ。 何て言ったらいいやら……… 岩にお尻擦り付けてるの可愛い 恐ろしい動物なのは間違いないけど顔も可愛いんだよな 人間のせいで住処がなくなったんだから 人間が住処を提供してやらなきゃ筋が通らねえよなあ 氷が減って人として申し訳ない…ただ逆におうちを建設したら住んでもらえるってことなんだろうか それなら提供できたりしないのかな コメントを書く

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