もしリムブレーキロードバイクが進化を続けていたら
Twitter(現X)で、リムブレーキVSディスクブレーキの議論が白熱している。自転車雑誌の特集で、自転車通勤、ヒルクライム、ロングライドを繰り返し取り上げられるのと同様、定期的に盛り上がる話題なので、「またやってるよ」という感じなのだが、
15年ほど昔を振り返ってみる。2010年前後は、フレームやホイールの軽量化が行くところまで行って、6.8kgのUCI規制の壁にぶち当たり、空力が注目されるようになってきた。 空力を重視し、フレームのチュービングを薄くする工夫はスチールフレームの時代からあったが、「エアロロード」というジャンルを作ったのは、トライアスロンにルーツを持つFELT AR(2008)だろう。その後、SCOTT FOIL(2011)を筆頭に、ロードバイクとしての運動性能と空力を両立させたバイクが次々登場してくる。
したがって、ブレーキシステムにかかわらず、ロードバイクのエアロ化は進んでいただろう。
実際、2015年に発売されたTREK MADONE(2015)とSPECIALIZED VENGI ViAS(2015)は、現在のエアロロードの要素をほとんど備えていた。 この2台はワイヤー類を完全内装し、空力を考慮した専用設計のブレーキを装備。「バイク全体」での空気抵抗を下げる、1世代進んだ考え方のバイクだった。
MADONEに至っては、ハンドルを切るとフロントブレーキワイヤーを隠すカウルがパカパカ動く構造で、悪い冗談だと思って大笑いした記憶がある。ただ、このバイクを改めて見ると、ワイヤーフル内装、ステム一体型エアロハンドルとバイク前面のフラッシュサーフェス化、さらにはコンプライアンス確保のためのIsoSpeed機構搭載と、2024年現在でも通用することがわかる。
専用ブレーキと劣悪な整備性Venge ViAS メンテナンスマニュアル PDF
このように、ワイヤーと内装は相性が悪い。ハイエンド帯のロードバイクでは、マグラRT8やSRAM REDのような、油圧リムブレーキが採用されるのではないだろうか。すると、パーツのコスト的には結局ディスクブレーキと変わらない…いや専用設計となるともっと高価になりうる。言うまでもないが、変速は電動シフトが前提になるだろう。
ややナローなタイヤとリム幅 コスト面ではリムブレーキはむしろ不利エアロロードにはCFDと風洞実験は不可欠。加えて、専用パーツの開発コストも当然乗ってくるだろう。第5世代MADONEの最上位モデル RSL H1(9070デュラエースDi2組)の価格は2015年の発表時で165万円、S-WORKS VENGE ViAS Di2(9070デュラエースDi2組)は134万円。物価や為替レート変動を考慮すると、現在のハイエンドバイクと大差ない価格になるだろう。
イマドキのハイエンドバイクはディスクブレーキだから高いのではなく、開発費が嵩むから高いのだ。
エアロなトレンドで高くなったのはフレームだけではない。ホイールの価格もどんどん上昇している。2024年モデルのCampagnolo BORA ULTRA WTOは667700円。このホイールはディスクブレーキ版しかラインナップされないが、仮にリムブレーキの場合、ブレーキレバーを引くたびコイツがすり減っていくことになる。
ミドルレンジ以下の状況ミドルレンジのバイクは、トップモデルと同じ形状でカーボンの繊維のグレードを下げたものが多い。エアロロードの開発には莫大な費用がかかるし、カーボンフレームを成形する金型も高価だが、複数グレードで共用することで1台あたりのコストを抑えられるというわけだ。例えば2023年発売のCannondale SuperSix EVOには3種類のグレードがあるが、フレーム価格85万円のLAB71も、62万円のHi-MODも、完成車で40万円(機械式105)のスタンダードMODも、全く同じ形状をしている。
ハイエンドと同じ形、同じ空力性能のバイクにリーズナブルな価格で乗れる。それは良いことだが、先に挙げたデメリットもすべて背負うことになる。
ブレーキシステムに関わらずバイクは高価格化する
結局、ディスクブレーキはロードバイクが高くなった要素のひとつでしか無い。物価や為替の影響を除くと、コスト増はほぼエアロのせいだ。