自然の力が生みだす造形美刀剣作りに魅せられて 【アーカイブ 2020年8月取材】
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刀工になろうと思ったきっかけは学生のとき経験した全国城郭巡りだった。念法寺の住職である祖父に嘆願され、住職の資格を取るため大谷大学短期大学部に通ったが、「自分の本当にやりたいことは何か」を日々悩み続けていた。子どものころからものづくりが好きだった川原さん。彦根城や姫路城、伊賀上野城などを訪れ、展示してある名刀を鑑賞するたびに、その輝きや曲線の美しさに惹かれた。どのように作られているか鑑定本などを夢中で読み漁り、刀工になりたい気持ちが日増しに高ぶっていった。 刀工になるには師匠の元で5年以上の修行が必要だ。更に文化庁の資格承認を取り師匠の許しを得ると独立できる。両親を説得し、奈良県桜井市の人間国宝・月山貞一刀匠に弟子入り願いの手紙を出し続けた。半年後弟子に空きが出たことで入門が叶い、師匠の手伝いをしながら仕事を覚えた。 「5年間修行し独立の準備を始めましたが、お金が無いので鍛錬所は全部手作りでした。土地の開墾から材木の運搬、骨組みなど全て一人では何もできず、友人や知人、集落の人など多くの人たちの助けをもらって建てました。1995(平成7)年鍛錬所が完成し、火入れ式で師匠から火を頂いたときは感無量でした」
祖父母の寺を継ぐことに刀工として永住し自立していこうと仕事を始めた矢先の1997年、祖父から住職を継いだ伯父が急死した。住職資格があって念法寺の跡を継げるのは自分しかいない。集落の人たちに世話になっている川原さんにとって、とても自分の口から寺の跡を継ぐとは言えなかった。念法寺の存続を願う門徒は、川原さんが住職に就くことを集落の人たちに度々懇願した。門徒の熱心な姿に川原さんも心を打たれ、住職になることを決意した。こうして刀職人を続けながら住職も務める一人二役の川原さんが誕生した。 念法寺の開創は不詳だが1584(天正12)年真宗道場として開かれ、1712年本堂が建立された歴史ある浄土真宗の寺だ。住職になって間もないころは、門徒の家を迷ったり違う家に上がり込んでお経の準備をしてしまったりすることもあったが、地元の人たちにあたたかく支えてもらった。 「炉の温度を上げると6~7時間火が止められません。4月から7月ころまでは寺の仕事に余裕ができるので日中制作し、ほかの時期は夜中に制作するスタイルが22年間続いています」
自然の力が生み出す造形美刀身を作るのは年間4,5振りほど。依頼主の意向や思いを聞きながらイメージを膨らませて作る。青白く澄み輝いているような地鉄(ぢがね)から刃文(はもん※刀身にできる波模様)が湧き上がっているのが名刀の条件という。刀身ができると研ぎ師に渡すが、研ぎ師から「良い刀だ」と言われるとうれしく、研ぐと表情が変わっていくのも楽しみだ。「鉄はなかなか自分の思い通りになりませんが、自然の力が生み出す偶然が美しい刃文を作り出します。そういう力を呼び込めるような仕事がしたいです。白熱球で照らすと刃文が天の川のようにふわっと広がる刀ができたときは最高にうれしいです」 ※写真は制作中の短刀 (取材:鋒山)
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