管理規約・使用細則の変更手順まとめ|総会決議から議事録作成までの実務フロー
管理規約・使用細則の変更手順まとめ|総会決議から議事録作成までの実務フロー

管理規約・使用細則の変更手順まとめ|総会決議から議事録作成までの実務フロー

管理規約や使用細則の変更手順を、検討から総会決議(特別決議)、議事録作成まで5ステップで完全解説。2026年法改正対応版。招集通知の書き方や票読みミスなど、管理組合が陥りやすい失敗事例と回避策もマンション管理士が整理します。

(失敗例:標準管理規約の「丸写し」は危険) よくある失敗が、管理会社に「最新の標準管理規約に合わせておいて」と丸投げしてしまうケースです。 管理会社はリスク回避のために、国交省の標準モデルをそのまま適用しようとします。しかし、標準管理規約はあくまで「標準的なマンション」を想定したモデルです。 あなたのマンションの実情(規模、設備、住民層)に合わない条文まで盛り込まれてしまい、かえってルールが複雑化・形骸化することがあります。 例えば、「役員の資格要件」や「駐車場の使用料設定」などは、マンションごとの個性が強く出る部分です。必ず理事会で「自分たちのマンションに必要なルールか?」を一文ずつ読み合わせ確認してください。

(推奨:専門委員会の立ち上げ) 規約変更は、条文の精査や住民アンケートの実施、新旧対照表の作成など、膨大な実務作業が発生します。通常の理事会業務(月1回の会議)のついでに行うには負荷が高すぎます。 そのため、理事会の諮問機関として「規約改正専門委員会」を立ち上げることを強く推奨します。 委員会には、現役理事だけでなく、過去の理事経験者や、法律・建築の知識がある居住者を公募で招き入れると、専門性が高まり、スムーズな合意形成につながります。また、理事が輪番で交代しても、委員会メンバーが継続することで検討が中断するリスク(「前の期のことは分からない」問題)を防ぐことができます。

【STEP3】理事会決議と総会招集

理事会での承認

(注意点:規約か?細則か?)「細則を直せば足りると思ったら、実は“規約側”の根拠が弱くて運用が崩れる」というミスがあります。ペットルールは、可否・頭数・種類・共用部移動・届出まで含めて細則に集約しているマンションが多い一方、マンションによっては規約本文で基本方針(例:飼育は細則で定める等)を置き、詳細を細則に委ねる書き方もあります。

まずは現行規約・細則の「どこに根拠が置かれているか」を確認し、改正対象(規約/細則/両方)を切り分けるのが安全です。

招集通知と議案書の配布

総会の日時が決まったら、区分所有者へ招集通知と議案書を配布します。 ここで最も注意すべきなのが、区分所有法第35条の規定です。

区分所有法第35条(招集の通知) 会議の目的たる事項が第十七条第一項、第三十一条第一項…の決議事項であるときは、議案の要領をも通知しなければならない。

(【危険】ここでの不備が決議無効を招く) 最も怖いのが、この招集通知の不備です。 「規約を一部変更します(詳細は当日説明します)」などと書いて、具体的な変更内容(新旧対照表など)を事前に配布し忘れると、せっかく総会で可決しても、後から「手続きに重大な瑕疵がある」として決議無効を主張されるリスクがあります。 必ず「どの条文を、どう変えるのか、その理由は何か」が分かる資料を、招集通知と一緒に全区分所有者に送付してください。

▼【2026年4月法改正】総会の招集通知の手続きについてはこちら

【規約解説】総会の招集手続で確認すべき事項を紹介(是非参考に)【令和8年マンション法改正対応済】 yokohama-mankan.com

【STEP4】総会決議(普通決議と特別決議)

ここが最大の山場です。変更する内容(規約か、細則か)によって、決議に必要な「賛成数」が異なります。 特に管理規約の変更については、令和8年(2026年)4月の法改正により、決議要件の考え方が大きく変わります。

管理規約の変更は「特別決議」

(規約の設定、変更及び廃止) 第三十一条 規約の設定、変更又は廃止は、集会において、区分所有者(議決権を有しないものを除く。以下この項前段において同じ。)の過半数(これを上回る割合を規約で定めた場合にあつては、その割合以上)の者であつて議決権の過半数(これを上回る割合を規約で定めた場合にあつては、その割合以上)を有するものが出席し、出席した区分所有者及びその議決権の各四分の三以上の多数による決議によつてする。この場合において、規約の設定、変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。

※ただし、総会成立の定足数(区分所有者数・議決権数とも過半数の出席)が必要です。「出席」の扱い(当日出席/委任状/議決権行使書の算入方法)は、管理規約・議事運営ルールにより整理が必要なため、事前に集計ルールを決めておくと安全です。

▼【重要】票の数え方と「決議無効」リスクの回避詳細はこちら

普通決議と特別決議の違い|「間違えると決議無効」になりやすい典型例とチェックリスト【令和8年4月法改正対応】 yokohama-mankan.com 委任状と議決権行使書の違い(票読みミス防止)

実務上、票読みの事故が多いのがここです。 「議決権行使書」は、提出時点で「賛成・反対」が確定します。一方、「委任状」はあくまで“誰に議決権を託すか”の意思表示であり、当日の議長判断や総会の進行次第で票の動きが変わる余地があります(白紙委任状の扱いなど)。

使用細則の変更は「普通決議」

標準管理規約第18条(使用細則) 対象物件の使用については、別に使用細則を定めるものとする。

【音声解説付き】マンション管理組合にある使用細則の種類を一挙紹介【是非参考に】 yokohama-mankan.com 「特別の影響」がある場合の承諾

(実務テクニック:経過措置の活用) 反対を減らし、承諾を得るための現実的な解として、「経過措置(附則)」の設定がカギを握ります。 ペットの例であれば、「本規約変更時にすでに飼育されているペットについては、その一代限りに限り飼育を認める」といった附則を明記します。 リフォーム制限の場合も、「施行日以降に申請された工事から適用する」とすることで、既存居住者の既得権益を守りつつ、将来に向けて段階的にルールを強化することができます。この「落とし所」の設計が、総会を荒れさせないコツです。

ペット飼育禁止のマンションでペットを飼っている場合の対応は? yokohama-mankan.com

【STEP5】変更後の実務(議事録・周知)

議事録への記載と原本保管

総会で可決されたら、議長(理事長)と議事録署名人が署名した議事録を作成します。 ここでのポイントは、「変更された新しい管理規約」を、原本として正しく保管することです。

(原本紛失のリスク:後から復元できないことがある) 規約原本が紛失すると、「現行規約が何か」を証明できず、次回の改正やトラブル対応で詰んでしまいます。議事録が残っていても、改正の積み重ねが多いと“どれが最新の条文か”の確定に莫大な時間と費用(弁護士費用など)がかかります。

組合員への周知徹底

(賃借人への周知漏れに注意) 特に賃貸に出している部屋の場合、区分所有者(オーナー)には通知が届いても、実際に住んでいる賃借人(入居者)には新しいルールが伝わっていないことがよくあります。 「ゴミ出しルール」や「ペット飼育細則」「バルコニーの使用細則」などが変わった場合は、エントランス掲示板や各戸へのポスティングなど、居住者全員の目に触れる方法で周知徹底を図りましょう。

(不動産仲介業者への最新版共有) 意外と忘れがちなのが、管理会社への最新版規約の提出です。 中古売買の際、不動産会社は管理会社が発行する「重要事項調査報告書」や規約の写しを元に買主へ説明を行います。ここで管理会社の手元にある規約が古いまま(変更が反映されていない)だと、購入者に誤ったルールが伝わり、「ペット不可なんて聞いていない」「リフォーム制限が違う」といった入居後のトラブルに直結します。 規約を変更したら、必ず管理会社(担当フロント)へ最新の原本データを渡し、重要事項説明の資料を更新してもらうよう依頼してください。

まとめ:手順を守れば怖くない

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マンション管理士・1級ファイナンシャル・プランニング技能士 古市 守

マンション管理全般に精通し、管理規約変更、管理会社変更、管理計画認定制度の審査、修繕積立金の見直し、自治体相談員、コラムの執筆など、管理組合のアドバイザーとして幅広く活動。 また、上場企業やスタートアップ・ベンチャー企業のCFOや財務経理部長経験から、経営・財務経理分野にも精通。コンサルティング会社経営の傍ら、経営・財務経理視点を活かし、マンション管理の実践的サポートを行う。 古市 守の著者紹介ページはこちら

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