アジリティトレーニング30選【米アスレティックトレーナーが解説】
アジリティトレーニングの考え方とその効果的な方法を米国公認アスレティックトレーナーの山口淳士が解説します。動画も。
この記事は山口淳士が執筆しました。 EXOS Performance Specialist/米国公認アスレティックトレーナー(BOC-ATC)/NASM-PES, CES 中京大学体育学部体育科学科卒業後、Bloomsburg University大学院でアスレティックトレーニングを学び、米国公認アスレティックトレーナーの資格を取得。2016年4月に6年間のアメリカ生活を終えて日本に帰国。現在はEXOS Performance Specialistとして、某大手企業内フィットネスセンターで運動指導などを行っている。また、アスレティックトレーニング系ブログ「CHAINON」と、熱中症ブログ「熱中症.com」を運営している。
- 1.アジリティトレーニングとは
- 1−1.アジリティトレーニングの定義
- 1−2.アジリティを構成する能力
- 1−3.アジリティ能力がないとどうなる?
- 1−4.ひとつのトレーニングだけではダメな理由
- 2−1.アジリティ能力をチェックしてみよう
- 2−2.アジリティ向上プログラムの作り方の一例(直線的ステップ・サイドステップ・交差 etc.)
- 3−1.ベースポジション・ホールド
- 3−2.ミニバンドウォーク
- 3−3.ミニバンド・ラテラルウォーク
- 3−4.クイックステップ(その場)
- 3−5.クロスオーバー・ウォールドリル
- 3−6.クロスオーバーステップ・マーチング
- 3−7.ラテラルスキップ
- 3−8.クロスオーバースキップ
- 3−9.ドロップステップスキップ
- 3−10.バックペダル
- 3−11.シングルレッグ・ホップ
- 4−1.ラダードリル6選
- 4−2.マーカーを利用したシャッフル(切り返し姿勢の確認)
- 4−3.シャッフル(連続)
- 4−4.クロスオーバー(姿勢の確認)
- 4−5.シャッフル to クロスオーバー to スプリント
- 4−6.スプリント to ストップ(減速の練習)
- 4−7.シャッフル(コーチの指示で方向転換)
- 4−8.シャッフル to スプリント to ストップ|スタードリル
- 4−10.ドロップステップ・シャッフル
- 4−11.ドロップステップ・クロスオーバー
- 4−12.ミラードリル(シャッフル to クロスオーバー to スプリント)
1.アジリティトレーニングとは
1−1.アジリティトレーニングの定義まず、アジリティとはなんでしょうか? アジリティは英語で書くとAgilityとなり、日本語訳は「軽快さ」「機敏さ」「敏捷性」「素早さ」などと出てきます。つまり、アジリティトレーニングとは簡単に言えば、「素早く動けるようになるトレーニング」のことを言います。
もう少し具体的に考えてみると、全米スポーツ医学会(National Academy of Sports Medicine)は、アジリティを「内的もしくは外的な情報に素早く反応し、スピードを落とさずに素早くかつ正確に方向を変える能力」と定義しています。つまり、ただ素早く動くだけがアジリティではなく、「情報に反応して」「スピードを落とさずに」「素早く正確に動く(=方向を変える)」といった要素すべてを合わせてアジリティ能力と呼び、これらを総合的に鍛えるのがアジリティトレーニングなのです。
1−2.アジリティを構成する能力・加速の速さ
・スピードの速さ
・減速(止まる動作)のうまさ
・方向転換(フットワーク)のうまさ・素早さ
・相手に反応する能力の高さ
・身体のコントロールのうまさ
1−3.アジリティ能力がないとどうなる?アジリティ能力というのは「たくさんの要素を統合した能力」と言えます。スピードがある選手は、100m走のようなまっすぐ走る競技なら誰にも負けないかもしれません。しかしサッカーやバスケなどのスポーツでは、ただ真っすぐ走っていれば良いわけではないですよね? そこには必ず相手がいて、その相手をかわさなければいけません。そのためには、うまく「減速」して味方にボールをパスしたり、「相手の動きに反応」して、「減速」し、「方向転換」をして、すぐに「加速」して、また「スピード」にのってゴールを目指す。これらの要素が合わさってはじめて相手をかわすことができ、ゴールにより近づきます。
さらに、アジリティ能力がないと、怪我のリスクが上がる、とも言えます。特に、「減速するとき」や「方向転換をするとき」は大きな怪我がよく起こってしまうシチュエーションです。アジリティ能力を高めることで、スポーツパフォーマンスレベルが上がることはもちろん、怪我の予防にも大変効果的なのです。
1−4.ひとつのトレーニングだけではダメな理由アジリティ能力はたくさんの要素を統合した能力であるため、それぞれの要素の能力が低い限り、全体のアジリティ能力も低いままということになります。よって、まずはそれぞれの要素をしっかりと高めることが重要です。より速く加速するためのトレーニング、より最高速度を上げるトレーニング、方向転換のスキルをあげるトレーニング、反応を高めるトレーニング、などなど。これら一つ一つの要素を高めつつ、それらを統合するアジリティトレーニングをすることではじめて、アジリティ能力が高い選手になることができます。
2.アジリティトレーニングの実践
アジリティトレーニングには、大きく分けて2種類あります。1つ目は「Planned Agility(=計画されたアジリティ)」と呼ばれるもの。これは、あらかじめどう進むかが決められていたり、何が起こるかがわかっていて、それに対して選手自身が事前にどう動くのかも知っていて、そのルートをいかに素早く進むことができるか、という練習になります。「Non-Reactive Agility(=反応性ではないアジリティ)」と呼ばれたりもします。主にラダーやコーンドリルで、あらかじめステップの方法が決まっていたり、次のコーンで何をすべきかがあらかじめわかっているものをさします。
このPlanned Agilityドリルが、最も基本的なアジリティトレーニングになります。あらかじめわかっているステップで決められた方向に素早く動く、ということができなければ、とっさに何か(ボール・敵など)に反応して素早く動くことはできません。まずはPlanned Agilityで正確な身体の動き、ステップの方法を覚えます。やることはわかっているので、そのルートをどれだけ素早く、軽快に動けるようになるかがポイントとなります。
2つ目が「Reactive Agility(=反応性アジリティ)」と呼ばれるもの。事前にどう動くかがわかっておらず、「目からの情報(=視覚情報)」や「耳からの情報(=聴覚情報)」などに反応して、どれだけ素早く身体を動かすができるか、を鍛えます。より実際のスポーツの動きや状況に近づきます。
2−1.アジリティ能力をチェックしてみよう■ Tテスト
■ 5-10-5シャッフル
2−2.アジリティ向上プログラムの作り方の一例(直線的ステップ・サイドステップ・交差 etc.)アジリティは様々な要素の集まりのため、まずは「加速」「減速」「ダッシュ」「方向転換」などの動きの準備をウォームアップで行います。その際に、アジリティ能力の鍵となる「シャッフル」「クロスオーバー」「ドロップステップ」の3つの動きの確認・練習を行います。その後、だんだん実践の動きに近づけていくことになります。
アジリティトレーニングをするタイミングは、筋トレ(ウエイトトレーニング)を行う前か、筋トレを行わない日が良いでしょう。筋トレを行なって神経系や筋肉が疲労した状態でアジリティトレーニングを行うことは効率的ではありません。また同じ理由で、それぞれのドリルの間に十分な休息時間を入れましょう。疲れた状態で行っても良い動きができないとともに、ケガのリスクが上がってしまいます。
3.アジリティトレーニング 一連の流れ
3−1.ベースポジション・ホールドまずはすべての動きのベースとなる、自分が一番安定しているポジションを見つけます(=ベースポジション)。方向転換や減速をする際は常にこのポジションを意識することで、次の動作を素早く行うことができます。
背筋はまっすぐにピンと張り、骨盤もニュートラル。膝を曲げて少し腰を落とします。ベースの足幅はスポーツによって異なります。自分のスポーツ、自分のポジションで一番よくとる「構え」のスタンスで行うと、より自分のスポーツの動きに繋げることができます。
3−2.ミニバンドウォーク 3−3.ミニバンド・ラテラルウォークシャッフルや切り返しの動きでは、脚全体の内側で推進力やストップ動作を行うことになります。よって、このラテラルウォークでは、左に進む場合は右脚の内側(右足の内側・右足首の内側・右膝の内側、右股関節の内側)で地面を押して進むことを意識しましょう。
3−4.クイックステップ(その場) 3−5.クロスオーバー・ウォールドリル 3−6.クロスオーバーステップ・マーチング 3−7.ラテラルスキップ 3−8.クロスオーバースキップクロスオーバーは、ウォールドリルで行ったように支持脚の外側全体で地面を押して進むことを意識します。逆側の膝も、進行方向に向けて上げるとともにできるだけ身体の近くを通します。腕をしっかり振ることも忘れないようにしましょう。
3−9.ドロップステップスキップアジリティ能力の向上の鍵となる最後のステップがこの「ドロップステップ」です。これは突然後ろ側に走り出す際に、素早く後ろを向くステップになります。しっかりと膝を持ち上げると同時に膝を開いて回旋させます。
3−10.バックペダル 3−11.シングルレッグ・ホップ4.複数の動きを取り入れた発展系トレーニング
4−1.ラダードリル6選 4−2.マーカーを利用したシャッフル(切り返し姿勢の確認)マーカーを適当な距離(スポーツに合わせて)に置き、シャッフルをして、マーカーのところで切り返しのポジションをとって一度止まり、姿勢のチェックをします。シャッフルは常にお尻を使って進むことを意識。シャッフルでの切り返し・方向転換は、ここまでやってきたように「脚の内側」です。切り返す瞬間にしっかり脚全体の内側を意識して地面を押しましょう。
また、切り返す際は身体を進行方向に傾けることや、姿勢を低く保つことも大切です。重心が高くなると素早い切り返しはできません。シャッフル中も、方向転換の際も、姿勢は低く保ちましょう。
4−3.シャッフル(連続) 4−4.クロスオーバー(姿勢の確認) 4−5.シャッフル to クロスオーバー to スプリント 4−6.スプリント to ストップ(減速の練習)このように「シャッフル」「クロスオーバー」「ダッシュ」「減速」などを組み合わせることで、様々なアジリティドリルを行うことができます。自分一人で行うときはPlanned Agilityドリルとして、頭で思い描く動きをどれだけ素早くうまく行えるか、という練習をしましょう。もしコーチなどがいる場合は、そこに「反応して動く」という要素を加え、より自分が行うスポーツの動きやシチュエーションに近づけていきます。
4−7.シャッフル(コーチの指示で方向転換) 4−8.シャッフル to スプリント to ストップ|スタードリルスプリント to ストップに、シャッフルを加えます。9個のマーカーを均等な距離で3×3で置くことで、様々な方向へのドリルを行うことができます。どこかのマーカーから別のマーカーまでシャッフルして、マーカーにたどり着いたら方向転換してダッシュし、マーカー手前で減速して止まります。
まずは自分で行く方向をあらかじめ決めて(=Planned Agility)、より素早くそれぞれの動きができるように練習します。動きができるようになったら、コーチなどに動き中に指示をしてもらい、その指示された所にダッシュ〜減速〜ストップを行なって、Reactive Agilityドリルにしていきましょう。
4−10.ドロップステップ・シャッフル 4−11.ドロップステップ・クロスオーバー 4−12.ミラードリル(シャッフル to クロスオーバー to スプリント)ミラードリルとは、前方の相手と同じ動きを行うドリル。相手がどんな動きを行うかわからず、それに合わせる(=ついて行く)Reactive Agilityドリルです。シャッフルやマーカーで行なったシャッフル to クロスオーバー to スプリントなどを、前方の相手の動きに合わせて行いましょう。
5.補足
6.まとめ
7.参考文献
・NSCA’s Guide to Program Design
・NASM Essentials of Sports Performance Training
・EXOS TM Performance Specialist Certification
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