菁莪育才(せいがいくさい)とは?詩経と魏書を読んでみた
菁莪育才(せいがいくさい)とは?詩経と魏書を読んでみた

菁莪育才(せいがいくさい)とは?詩経と魏書を読んでみた

全十五巻の超どデカイ『大漢和辞典』で有名な諸橋轍次先生が初代学長を務めた都留文科大学の学訓は「菁莪育才」、元ネタは『詩経』と『魏書』?読んでみましょう

【原文】菁菁者莪 在彼中阿既見君子 樂且有儀菁菁者莪 在彼中沚既見君子 我心則喜菁菁者莪 在彼中陵既見君子 錫我百朋汎汎楊舟 載沈載浮既見君子 我心則休

【書き下し文】 菁菁 ( せいせい ) たる 莪 ( が ) 彼 ( か ) の 中阿 ( ちゅうあ ) に在り 既 ( すで ) に君子を見る 樂しみ 且 ( か ) つ 儀 ( のり ) あり菁菁たる莪 彼の 中沚 ( ちゅうし ) に在り既に君子を見る 我が心則ち喜ぶ菁菁たる莪 彼の中陵に在り既に君子を見る 我に 百朋 ( ひゃくほう ) を 錫 ( たま ) う 汎汎 ( はんはん ) たる楊舟 沈を載せ浮を載す既に君子を見る 我が心則ち休す

【訳】あおあおと茂ったツノヨモギが あの丘にある君子に会えたから 楽しみながらもきちんとした

あおあおと茂ったツノヨモギが あの水辺にある君子に会えたから 私の心は喜んだ

あおあおと茂ったツノヨモギが あの山にある君子に会えたから 私はごほうびをもらった

ただよう楊舟は 浮かんだり沈んだり君子に会えたから 私の心はやすらいだ

序を読めば分かる、学訓の意味

【原文】菁菁者莪樂育材也君子能長育人材則天下喜樂之矣

【書き下し文】菁菁者莪は育材を樂しむなり君子 能 ( よ ) く人材を長育すれば則ち天下これを喜樂す

【訳】菁菁者莪は人材育成を喜ぶ詩である君子が人材を大きく育成することができれば天下は喜び楽しむということだ

「菁莪育才」の真の出典?『魏書』羊深伝

北 ( ほく ) 魏 ( ぎ ) の歴史を記した正史『 魏 ( ぎ ) 書 ( しょ ) 』の 羊深 ( ようしん ) 伝に「菁莪育才」という四文字があります

【原文】竊以今之所用,弗修前矩。至如當世通儒,冠時盛德,見徵不過四門,登庸不越九品。以此取士,求之濟治,譬猶却行以及前,之燕而向楚。積習之不可者,其所由來漸矣。昔魯興泮宮,頌聲爰發;鄭廢學校,國風以譏。將以納民軌物,莫始於經禮;菁莪育才,義光於篇什。自兵亂以來,垂將十載,干戈日陳,俎豆斯闕。四海荒涼,民物凋弊,名教頓虧,風流殆盡。世之陵夷,可為歎息。

【訳】現在の人材登用のありかたについてひそかに思いますに、前人の 轍 ( てつ ) を踏んでおります。当世に冠たる徳を持つ、儒に通じた儒者が、学校の中でしか評価されず、登用されても九品を過ぎることはないという状況です。このような人材登用をしながら世の中を治めようとするとは、後ろへ行こうとして前へ進むようなもの、 燕 ( えん ) に行こうとして 楚 ( そ ) に向かうようなものです。長年まずいことを積み重ねていれば、しだいに影響が出るものです。むかし 魯 ( ろ ) は 泮宮 ( はんきゅう ) (高等教育の学校)を興し、徳を称賛されました。 鄭 ( てい ) は学校を廃し、国がらをそしられました。民を収容し物に秩序を与えようとすれば礼学から始めるしかありませんし、人材育成のすじみちは詩にあきらかに示されています。戦乱が起こってから十年にもなり、戦いが日々続き、祭祀の道具も欠けてしまいました。天下は荒れ、民は疲弊し、教えは急速に失われ、遺風は尽きようとしています。世の衰退は嘆くべきありさまです。