草野心平「紅梅」…どうして紅の花が咲き匂うのか
草野心平「紅梅」…どうして紅の花が咲き匂うのか

草野心平「紅梅」…どうして紅の花が咲き匂うのか

草野心平さんは、蛙や富士山について書かれた詩が多いため、「蛙の詩人」「富士山の詩人」と思われがちですが、一言で括れないくらいスケールの大きな詩人です。天体や人間や動植物など、森羅万象の詩を数多く残しています。今回は「紅梅」という詩を紹介いた...

紅梅

どうして紅の花が咲きどうして。 ふくいくとした香りをわかせるのだらう。どうして。 肌荒いごつごつの幹から。 若若しい枝がのび。 点点点点。点点。 紅の花がひらく。 けれどもどうして。 どうして紅の花がひらくのか。 どうしてその花花は匂ふのか。

梅にも生年月日があり。 それはあの緻密な年輪の渦のはじまりである筈だがどうしてそれは生まれるのか。 年輪は時間の堅い凝縮。 いのちの象徴。 そのいのちから点点点点の花花たち。

けれどもそれはどうして紅なのかどうして匂ふのか。 どうして雪は。 紅梅のまはりに余計降りたい気持ちになるのか。 降つて積つてそして晴れて紅梅の紅を更に鮮かにしたいのか。(そんな馬鹿な) けれどもどうしてごつごつの 生命 いのち のはてに。 ひらく花花が紅なのかどうしてそれは匂ふのか。

草野心平「紅梅」(詩集『原音』所収)

こんな小学生のような詩を書ける詩人が他にいるだろうか。そしてむろん、こんな詩を書ける小学生もいない。

引用元:現代詩文庫 草野心平詩集(思潮社)

草野心平「紅梅」(詩集『牡丹圏』所収)

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