北原白秋 「糸車」(詩集『思ひ出』より)
糸車糸車、糸車、しづかにふかき手のつむぎ、その糸車やはらかにめぐる夕ゆふべぞわりなけれ。金と赤との南瓜たうなすのふたつ転ころがる板の間まに、「共同医館」の板の間に、ひとり坐りし留守番るすばんのその媼おうなこそさみしけれ。耳もきこえず、目も見
星とたんぽぽ 青いお空の底ふかく、 海の小石のそのように、 夜がくるまで沈んでる、 昼のお星は眼にみえぬ。 見えぬけれどもあるんだよ、 見えぬものでもあるんだよ。 散ってすがれたたんぽぽの、 瓦のすきに、だァまって、.
北原白秋 「薔薇二曲」(詩集『白金之独楽』より) 薔薇二曲 一 薔薇バラノ木二 薔薇バラの花サク。 ナニゴトノ不思議ナケレド。 二 薔薇ノ花。 ナニゴトノ不思議ナケレド。 照リ極マレバ木ヨリコボルル。 光リコボルル。 作者と作品について . 金子みすゞ 「春の朝」「足ぶみ」「ふうせん」「明日」(『金子みすゞ全集』より) 春の朝 雀がなくな、 いい日和だな、 うっとり、うっとり、 ねむいな。 上の瞼まぶたはあこうか、 下の瞼はまァだよ、 うっとり、うっとり ねむいな。 足ぶみ わらびみたよな雲が出て、 空には春が. 室生犀星 「はる」「桜咲くところ」「万人の孤独」「蒼空」(詩集『愛の詩集』より)はる おれがいつも詩をかいてゐると 永遠がやつて来て ひたひに何かしらなすつて行く 手をやつて見るけれど すこしのあとも残さない素早い奴だ おれはいつもそいつを見ようとして あせつて手を焼いてゐる 時がだんだん進んで行く .
八木重吉 「春も晩く」「おもひなき哀しさ」「しづかなるながれ」「春」(詩集『秋の瞳』より)春も 晩く 春も おそく どこともないが 大空に 水が わくのか 水が ながれるのか なんとはなく まともにはみられぬ こころだ 大空に わくのは おもたい水なのか おもひなき 哀しさ はるの日の わづ.