八木重吉 「春も晩く」「おもひなき哀しさ」「しづかなるながれ」「春」(詩集『秋の瞳』より)
八木重吉 「春も晩く」「おもひなき哀しさ」「しづかなるながれ」「春」(詩集『秋の瞳』より)

八木重吉 「春も晩く」「おもひなき哀しさ」「しづかなるながれ」「春」(詩集『秋の瞳』より)

春も 晩く 春も おそくどこともないが大空に 水が わくのか水が ながれるのかなんとはなくまともにはみられぬ こころだ大空に わくのはおもたい水なのかおもひなき 哀しさ はるの日のわづかに わづかに霧きれるよくはれし野をあゆむああ おもひな

はる おれがいつも詩をかいてゐると 永遠がやつて来て ひたひに何かしらなすつて行く 手をやつて見るけれど すこしのあとも残さない素早い奴だ おれはいつもそいつを見ようとして あせつて手を焼いてゐる 時がだんだん進んで行く .

北原白秋 「薔薇二曲」(詩集『白金之独楽』より) 薔薇二曲 一 薔薇バラノ木二 薔薇バラの花サク。 ナニゴトノ不思議ナケレド。 二 薔薇ノ花。 ナニゴトノ不思議ナケレド。 照リ極マレバ木ヨリコボルル。 光リコボルル。 作者と作品について . 立原道造 「燕の歌」「うたふやうにゆつくりと‥‥」(詩集『優しき歌Ⅰ』より) 燕の歌 春来にけらし春よ春 まだ白雪の積れども ――草枕 灰色に ひとりぼつちに 僕の夢にかかつてゐる とほい村よ あの頃 ぎぼうしゆとすげが暮れやすい花を咲き 山羊(や. 金子みすゞ 「星とたんぽぽ」「露(つゆ)」「暦と時計」(『金子みすゞ全集』より)

星とたんぽぽ 青いお空の底ふかく、 海の小石のそのように、 夜がくるまで沈んでる、 昼のお星は眼にみえぬ。 見えぬけれどもあるんだよ、 見えぬものでもあるんだよ。 散ってすがれたたんぽぽの、 瓦のすきに、だァまって、.

萩原朔太郎 「旅上」「五月の貴公子」(詩集『純情小曲集』『月に吠える』より)

旅上 ふらんすへ行きたしと思へども ふらんすはあまりに遠し せめては新しき背廣をきて きままなる旅にいでてみん。 汽車が山道をゆくとき みづいろの窓によりかかりて われひとりうれしきことをおもはむ 五月の朝のしののめ うら.