室生犀星 「はる」「桜咲くところ」「万人の孤独」「蒼空」(詩集『愛の詩集』より)
はるおれがいつも詩をかいてゐると永遠がやつて来てひたひに何かしらなすつて行く手をやつて見るけれどすこしのあとも残さない素早い奴だおれはいつもそいつを見ようとしてあせつて手を焼いてゐる時がだんだん進んで行くおれの心にしみを遺しておれのひたひを
おれは睡いのだ かれはかう言つてやはり睡つてゐた かれの上には 大きな蒼蒼とした空が垂れてゐた かれの目は悲しさうに時時ひらく 日かげはうらうらとしてゐる 地主が来て泥靴をあげて蹶りつけた けれどもかれはすやすやと 平和にくつろいで寝てゐた やがて巡査が来て起きろ起きろと言つた かれはしづかに眼をあいて また睡つてしまつた みんなは惘れてかへつて 去 い つた 草もしんとしてゐた 蒼空はだんだんに澄んで その蒼さに充ち亘るのであつた
作者と作品について
室生 犀星(むろう さいせい) 1889年(明治22年)~1962年(昭和37年) 石川県金沢市生まれ
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八木重吉 「花がふってくると思う」「花」「桜」「陽遊」「豚」(詩集『貧しき信徒』より) 花がふってくると思う 花がふってくると思う 花がふってくるとおもう この てのひらにうけとろうとおもう 花 おとなしくして居いると 花花が咲くのねって 桃子が言う 桜 綺麗な桜の花をみていると . 高村光太郎 「あどけない話」(詩集『智恵子抄』より)あどけない話 智恵子は東京に空が無いといふ、 ほんとの空が見たいといふ。 私は驚いて空を見る。 桜若葉の間に在るのは、 切つても切れない むかしなじみのきれいな空だ。 どんよりけむる地平のぼかしは うすもも色の朝のしめり.
金子みすゞ 「春の朝」「足ぶみ」「ふうせん」「明日」(『金子みすゞ全集』より) 春の朝 雀がなくな、 いい日和だな、 うっとり、うっとり、 ねむいな。 上の瞼まぶたはあこうか、 下の瞼はまァだよ、 うっとり、うっとり ねむいな。 足ぶみ わらびみたよな雲が出て、 空には春が. 宮沢賢治 「春と修羅」(『心象スケッチ 春と修羅』より)春と修羅 (mental sketch modified) 心象のはひいろはがねから あけびのつるはくもにからまり のばらのやぶや腐植の湿地 いちめんのいちめんの諂曲(てんごく)模様 (正午の管楽(くわんがく)よりもしげく .
中原中也 「春と赤ン坊」「雲雀」(詩集『在りし日の歌』より)春と赤ン坊 菜の花畑で眠つてゐるのは…… 菜の花畑で吹かれてゐるのは…… 赤ン坊ではないでせうか? いいえ、空で鳴るのは、電線です電線です ひねもす、空で鳴るのは、あれは電線です 菜の花畑に眠つてゐるのは、赤ン坊ですけど .