北原白秋「片恋」(詩集『東京景物詩乃其他』より)
北原白秋「片恋」(詩集『東京景物詩乃其他』より)

北原白秋「片恋」(詩集『東京景物詩乃其他』より)

片恋あかしやの金きんと赤とがちるぞえな。かはたれの秋の光にちるぞえな。片恋かたこひの薄着うすぎのねるのわがうれひ曳舟ひきふねの水のほとりをゆくころを。やはらかな君が吐息といきのちるぞえな。あかしやの金と赤とがちるぞえな。作者と作品について

初恋 まだあげ初(そ)めし前髪(まへがみ)の 林檎(りんご)のもとに見えしとき 前にさしたる花櫛(はなぐし)の 花ある君と思ひけり やさしく白き手をのべて 林檎をわれにあたへしは 薄紅(うすくれなゐ)の秋の実(み)に 人.

山村暮鳥 「りんご」「赤い林檎」(詩集『雲』より) りんご 兩手をどんなに 大きく大きく ひろげても かかへきれないこの氣持 林檎が一つ 日あたりにころがつてゐる 赤い林檎 林檎をしみじみみてゐると だんだん自分も林檎になる おなじく 林檎は. 中原中也 「蜻蛉に寄す」(詩集『在りし日の歌』より)

蜻蛉に寄す あんまり晴れてる 秋の空 赤い蜻蛉(とんぼ)が 飛んでゐる 淡(あは)い夕陽を 浴びながら 僕は野原に 立つてゐる 遠くに工場の 煙突が 夕陽にかすんで みえてゐる 大きな溜息 一つついて 僕は蹲(しやが)ん.

萩原朔太郎 「蝶を夢む」(詩集『蝶を夢む』より)

蝶を夢む 座敷のなかで 大きなあつぼつたい翼はねをひろげる 蝶のちひさな 醜い顏とその長い觸手と 紙のやうにひろがる あつぼつたいつばさの重みと。 わたしは白い寢床のなかで眼をさましてゐる。 しづかにわたしは夢の記憶をたどらうとす.

金子みすゞ 「どんぐり」「梨の芯」(『金子みすゞ全集』より)

どんぐり どんぐり山で どんぐりひろて、 お帽子にいれて、 前かけにいれて、 お山を降りりゃ、 お帽子が邪魔よ、 辷すべればこわい、 どんぐり捨てて お帽子をかぶる。 お山を出たら 野は花ざかり、 お花を摘つめば、 .