北原白秋「落葉松」(詩集『水墨集』より)
北原白秋「落葉松」(詩集『水墨集』より)

北原白秋「落葉松」(詩集『水墨集』より)

落葉松一からまつの林を過ぎて、からまつをしみじみと見き。からまつはさびしかりけり。たびゆくはさびしかりけり。二からまつの林を出でて、からまつの林に入りぬ。からまつの林に入りて、また細く道はつづけり。三からまつの林の奥もわが通る道はありけり。

西瓜の詩 農家のまひるは ひつそりと 西瓜のるすばんだ 大でつかい奴がごろんと一つ 座敷のまんなかにころがつてゐる おい、泥棒がへえるぞ わたしが西瓜だつたら どうして噴出さずにゐられたらう おなじく 座敷のまんなか.

島崎藤村 「椰子の實」 (詩集『落梅集』より)

椰子の實 名も知らぬ遠き島より 流れ寄る椰子の實一つ 故郷ふるさとの岸を離れて 汝なれはそも波に幾月 舊もとの樹は生ひや茂れる 枝はなほ影をやなせる われもまた渚を枕 孤身ひとりみの浮寢の旅ぞ 實をとりて胸.

高村光太郎 「人に」(詩集『智恵子抄』より)

人に 遊びぢやない 暇つぶしぢやない あなたが私に会ひに来る ――画もかかず、本も読まず、仕事もせず―― そして二日でも、三日でも 笑ひ、戯れ、飛びはね、又抱き さんざ時間をちぢめ 数日を一瞬に果す ああ、けれども .

萩原朔太郎 「中學の校庭」(詩集『純情小曲集』より)

中學の校庭 われの中學にありたる日は 艶なまめく情熱になやみたり いかりて書物をなげすて ひとり校庭の草に寢ころび居しが なにものの哀傷ぞ はるかに青きを飛びさり 天日てんじつ直射して熱く帽子に照りぬ。 作者と作品に.

北原白秋 「海の向う」(童謡)

海の向う さんごじゆの花が咲いたら、 咲いたらといつか思つた、 さんごじゆの花が咲いたよ。 あの島へ漕いで行けたら、 行けたらといつか思つた、 その島にけふは来てるよ。 あの白帆どこへゆくだろ、 あの小鳥どこへゆくだ.