三好達治 「朝はゆめむ」(詩集『故郷の花』より)
三好達治 「朝はゆめむ」(詩集『故郷の花』より)

三好達治 「朝はゆめむ」(詩集『故郷の花』より)

朝はゆめむところもしらぬやまざとにひまもなくさくらのはなのちりいそぐをいろあはきさくらのはなのひまもなくななめにちるをあさはゆめむさくらのはなのただはらはらとちりいそぐをはらはらとはなはひそかにいきづきてかぜにみだれてながるるをやみてまたそ

ところもしらぬやまざとに ひまもなくさくらのはなのちりいそぐを いろあはきさくらのはなのひまもなくななめにちるを あさはゆめむ さくらのはなのただはらはらとちりいそぐを はらはらとはなはひそかにいきづきてかぜにみだれてながるるを やみてまたそのはなのはつかにちるを さくらのはなのかくもあはれにちるをゆめみしあさのゆめ めにさやか―― またみづよりもしめやかにこころにしみてわすれがたかり わきてこはかやのすそはやひややかにほにふるる うらぶれしあきのあさなれば ゆめさめてわれはかなしむ ゆゑしらぬとほきひのなげかひのいやとほきはてのなごりを

作者と作品について

三好 達治(みよし たつじ) 1900年(明治33年)~1964年(昭和39年) 大阪府大阪市生まれ

さくらが描かれているため、もしかしたら春の詩と思う方もいるかもしれませんが、実は秋の詩。 桜の散る夢から目覚めた秋の朝に、その余韻を歌ったものです。 (12行目にも、「あきのあさ」とあります)

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萩原朔太郎 「廣瀬川」「晩秋」(詩集『純情小曲集』『氷島』より)

廣瀬川 廣瀬川白く流れたり 時されば皆幻想は消え行かむ。 われの生涯らいふを釣らんとして 過去の日川邊に糸をたれしが ああかの幸福は遠きにすぎさり 小ちひさき魚は瞳めにもとまらず。 晩秋 汽車は高架を走り行き 思ひは陽.

室生犀星 「秋の日」「小曲」「月草」「くらげ」「静かなる空」「朱き葉」(詩集『抒情小曲集』より)

秋の日 つかの間に消え去りし つかの間に消え去りしは あきつのかげにあらざるか ぐらすのごとき秋の日に かげうち過ぐるもの わが君のかげにあらざるか とほき床屋のぎん鋏 波を越えくるかげなるか あらずおんみのひとみ.

北原白秋「片恋」(詩集『東京景物詩乃其他』より)

片恋 あかしやの金きんと赤とがちるぞえな。 かはたれの秋の光にちるぞえな。 片恋かたこひの薄着うすぎのねるのわがうれひ 曳舟ひきふねの水のほとりをゆくころを。 やはらかな君が吐息といきのちるぞえな。 あかしやの金と赤とがちるぞえ.

室生犀星 「時無草」「秋の終り」(詩集『抒情小曲集』より)

時無草 秋のひかりにみどりぐむ ときなし草は摘みもたまふな やさしく日南にのびてゆくみどり そのゆめもつめたく ひかりは水のほとりにしづみたり ともよ ひそかにみどりぐむ ときなし草はあはれ深ければ そのしろき指もふれたまふ.

立原道造 「忘れてしまつて」(詩集『萱草に寄す』より)

忘れてしまつて 深い秋が訪れた!(春を含んで) 湖は陽にかがやいて光つてゐる 鳥はひろいひろい空を飛びながら 色どりのきれいな山の腹を峡の方に行く 葡萄も無花果も豊かに熟れた もう穀物の収穫ははじまつてゐる 雲がひとつふた.