【映画感想】国宝 ☆☆☆☆☆
任侠の一門に生まれた喜久雄は15歳の時に抗争で父を亡くし、天涯孤独となってしまう。喜久雄の天性の才能を見抜いた上方歌舞伎の名門の当主・花井半二郎は彼を引き取り、喜久雄は思いがけず歌舞伎の世界へ飛び込むことに。喜久雄は半二郎の跡取り息子・俊介と兄弟のように育てられ、親友として、ライバルとして互いに高めあい、芸に青春を捧げていく。 kokuhou-movie.com 2025年映画館での鑑賞12作目。平日の朝、8時半からの回だったのですが、観客が100人くらいいて驚きました。 比較的年齢が高い観客が多そうな映画とはいえ、公開からだいぶ日が経っていることもあり、こんなに人気があるとは。 news.l…
この原作を映像化した李相日監督すごい。 代役なしでここまで凄みのある歌舞伎の舞台を演じてみせた吉沢亮さんと横浜流星さん(あと、2人の青年時代を演じた黒川想矢さんと越山敬達さん)がすごい。 渡辺謙さんと田中泯さんの存在感と説得力がすごい。 180分の長さで公開することを決断した制作・配給会社がすごい。 ネガティブな面も描かれているにもかかわらず、妥協せずに協力した歌舞伎界の人たちもすごい。 この映像美をつくりあげた撮影や美術のスタッフもすごい。
僕はこれをみて感動するのとともに(けっこう長い間、山下さんの音楽やラジオに触れてきたので)、あのバッシングは何だったんだ?と思ったのです。 最高の「芸」が持つ説得力というか、それが場の雰囲気を変える力への怖さも感じました。 もちろん、バッシングしたのと同じ人が、生のステージをみて絶賛したわけではないと思うけれど、圧倒的な芸というのは、これほどの力があるのです。
もちろん、技術的な「上手い」「下手」はどの世界にもあるはずです。 でも、「最高の芸」というのがどういうものなのか、それを客観的な指標として数値化・定量化するのはきわめて難しい。 アスリートの「記録」のようにはいかない。
この『国宝』という映画は、「ある至高の芸人の生涯」を描いているけれど、それを正当化も美化もしていないし、その一方で、現在の価値観で断罪もしていない。 「ここがすごい」と、芸のすごさを登場人物は言葉で観客に解説することはないけれど、その舞台をみているだけで、観客は息をのんで、理解してしまう。 説明的なセリフを入れない、覚悟と勇気、そしてキャストの気迫。
しかし、歌舞伎という伝統芸能が、このままで続いていくのが正しいことなのか、疑問に感じている自分もいるのです。 香川照之さんが歌舞伎界でも活躍されていますが、ずっと歌舞伎をやってきた人にとっては、ああいう「血統の良さでブーストされてエベレストの頂上にパラシュートで降下」みたいな状況は、どうみえているのかな。 でも、市川海老蔵さんの「一家の物語」で、海老蔵さんの子どもたちを応援してしまう自分もいるわけで。