炭素鋼の腐食基礎|化学プラントで押さえておきたい反応メカニズム
炭素鋼の腐食基礎|化学プラントで押さえておきたい反応メカニズム

炭素鋼の腐食基礎|化学プラントで押さえておきたい反応メカニズム

化学プラントで使われる炭素鋼の腐食を基礎から解説。酸性・中性・アルカリ性環境や溶存酸素・温度の影響、硫酸など代表的酸での挙動を理解して設備寿命を延ばす知識を学べます。

化学プラントの設備エンジニアにとって、腐食は避けられない重要な知識です。設備は時間とともに腐食が進み、寿命が短くなるとコストや安全性に直結します。特に炭素鋼は多くの配管・タンクで使われており、基礎的な腐食メカニズムを理解することは、実務での判断や材質選定に役立ちます。 本記事では、化学反応式を交えながら炭素鋼の腐食の基本と環境別の挙動をわかりやすく解説します。基本知識としての炭素鋼の腐食は押さえておくべきで、反応式など原則的な部分も知っておいた方が良いです。実務では応用としての材質試験ばかりが目立ってしまうために、基礎知識が不要と思いがちですが、議論をするうえではやはり必要でしょう。

腐食反応

金属にとって腐食は避けることができません。鉄を例にすると、Fe2O3が地球上では安定な状態です。工場でFeの形に還元して、所定の形に加工して、配管等に使用します。そのためFeというのは地球上では不安定な状態と言えます。これが安定なFe2O3の状態に戻ろうとすることは避けられません。

鉄の腐食(酸性)
  • Fe → Fe 2+ + 2e –
  • 2H + + 2e – → H2

この反応式は極めて重要です。

鉄は腐食が起こると鉄イオンになります。鉄イオンになって水に溶けたり別の化合物になるために、鉄が削れていきます。鉄はFe 2+ という陽イオンになります。

ここまで分かれば、 Fe → Fe 2+ + 2e – という化学式と関連付けることができます。腐食という電池反応を起こすには、鉄から出た2e – を消費しないといけません。このために、別の陽イオンが必要です。

酸性溶液下ではH + が過剰に存在しています。そのH + の存在に釣られるようにして、鉄がイオン化して電子の移動が起こります。イオン化すると、溶液中の不純物と鉄が反応して、純粋な鉄以外の物質に変化します。

腐食で鉄が削られる量は、溶液中のH + の総量に比例するという当たり前のことが目立つようになります。H + の量が腐食に影響するため、pHが低い強い酸であるほど、腐食は進行します。

鉄の腐食(中性)
  • Fe → Fe 2+ + 2e –
  • 1/2O2 + H2O + 2e – → 2OH –

この反応式も重要です。H + は存在しませんが、O2がその代わりをします。

水中の酸素が腐食の役目を果たします。水中の酸素は溶存酸素と言います。水中の溶存酸素量が多い方が、腐食量が多いという事になります。

鉄の腐食(アルカリ性)

アルカリ性では腐食がほとんど起きません。というのも、OH – が多いからです。H + がほぼ存在しない環境で、酸性時と同じ反応は進みません。

中性時の反応でも、O2が電子を受け取って、OH – になる反応です。溶存酸素がある程度あっても、OH – が多いために、OH – が増える方向の反応が起きずに、逆反応である酸素が増える方向に作用するからです。

溶存酸素の影響

溶存酸素は温度と関係があります。 温度が高いほど溶存酸素量は少なくなり ます。例えば25℃での溶存酸素は8.26ppm、0℃だと14ppmくらいです。25℃の水にエアーを強制的に吹き込むと溶存酸素濃度は上がり、10~15ppmで腐食速度が最大となります。

低温の水で腐食速度が速くなるのは、溶存酸素が上がるからです。 0℃より低い水では鉄の腐食を疑いましょう。 溶存酸素と水に対する処置の相対的な関係を示しましょう。

  • 空気を吹き込む:40
  • 大気解放する : 9
  • 窒素を吹き込む: 1

空気を吹き込むと溶存酸素が上がり、窒素を吹き込むと溶存酸素が下がるという関係性を示しています。窒素を吹き込むことで腐食性を抑えることができますが、ランニングコストは上がります。

温度の影響

温度が高いほど腐食速度は上がっていきます。反応速度があがるからですね。

開放系密閉系 と2つの系統を考えます。開放系は空気が補給される系、密閉系は空気が補給されない系です。タンクを窒素シールしていると密閉系ですね。大気開放をしていると開放系です。

開放系 だと、 80℃ くらいがピークになり、それより高温になると腐食速度は下がります。これは、100℃になると水が沸騰するためです。

密閉系 では、 100℃を越えても 水の圧力が上がるだけで沸騰しません。したがって、温度は高くなるにつれて腐食速度は上がり続けます。

具体的な酸と炭素鋼の腐食

硫酸環境中 濃硫酸

炭素鋼は60%以上くらいの濃硫酸に対しては、腐食速度が低いです。

希硫酸

硫酸濃度が50%より低いと、腐食速度はかなり高くなります。濃硫酸の10倍くらい速い速度で腐食します。

高温ではステンレスやハステロイでも持たない

沸騰するくらいの高温硫酸では、 SUS316L やハステロイ系の高級材質でも腐食します。高温の場合は、硫酸濃度が高い方が腐食しやすいです。とはいえ、バッチ系では高温の硫酸を扱うケースがほとんどなく、私は扱ったことがありません。

塩酸環境中

私が持っているデータは、沸点近くの塩酸に対する耐食データです。これもハステロイやチタン等の高級材質でも持たないことを示すだけのデータです。バッチ系ではこの環境で使うことはほとんどありません。

硝酸環境中

炭素鋼の常温硝酸に対する耐食性はありません。炭素鋼の常温硫酸に対する腐食速度の約100倍くらいの腐食速度があります。

塩濃度

腐食速度はピークがある

塩濃度に比例して腐食速度は上がっていくイメージがあります。ところが、一定値でピークを持ちます。

電気伝導度は増えていく

塩濃度が増えると、電気伝導度は当然増えます

酸素溶解度は下がっていく

塩濃度が増えると、酸素溶解度は減っていきます。酸素溶解度が減ると、腐食反応に寄与する酸素が減りますので、腐食速度は下がっていきます。

参考

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最後に

【著者:ねおにーーと】

化学プラントで20年以上、設計→製造→保全→企画まで一気通貫で経験したユーザー側エンジニア。 バッチプラントの設備・運転・トラブル対応を中心に、現場で本当に役立つ知識を発信しています。 → 詳しいプロフィールはこちら

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書いている人:ねおにーーと

ユーザー系化学プラントエンジニア(バッチ中心)

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