【ピストルがプールの硬き面にひびき】俳句の季語や意味・表現技法・鑑賞文・作者など徹底解説!!
俳句はうつろう四季の美しさ、自然の見せる絶景、日々の心の揺らぎなどを短い言葉で詠み込みます。 数多くの句が詠まれ、鑑賞され、愛されていますが、名句と呼ばれる句は文学としても非常に優れた価値を持って
「世界で最も短い詩」といわれている俳句。 五七五のわずか17音という非常に短い言葉の中にさまざまな思いを込めて、読み手に想像や連想を喚起させる奥深い文芸です。 今回は、昭和初期の「ホトトギス」の黄金時代を築いたといわれているを春夏秋冬ごとにご紹介します。 山口誓子(1901-1994)俳人 .
季語こちらの句の季語は 「プール」 で、季節は 「夏」 です
プールの指す夏は、 正確には「晩夏」を指します。
晩夏とは小暑から立秋の前日までを指し、日付で言えば 7 月 7 日頃から 8 月 6 日頃になります。
ただし、俳句の暦は旧暦という現在とは異なるカレンダーでしたので、現在に置き換えると 1 か月から 1 か月半ほど加算して考える必要があります。
そのため、現在の暦ではおよそ 8 月中旬から 8 月下旬に換算されます。
また今回の句は戦前に詠まれたこともあり、 プールは屋外だったことも注目したい点 の一つです。
意味この句を 現代語訳 すると・・・
「競泳会場でスタートを固唾をのんで見ていると、スタートを告げるピストルの音が響き渡った。」
この句が詠まれた背景この句は 1936年の夏に「山口誓子」が詠んだもの になります。
まずは、 1936 年の水泳事情からみていきましょう。
この年は 8 月 1 日から夏季オリンピックがベルリンで開かれ、日本は競泳部門で 4 つの金メダルを取るなど、めざましい活躍が見られた年でもありました。
ただし、誓子の注釈では単に水泳を見に行った話と書かれており、ベルリンオリンピックを見に行ったものではないことが分かります。
オリンピックを直接詠んだものではないのですが、この句が詠まれた 1936 年は、それだけ水泳は日本の中では非常に明るい話題であり、 競泳に盛り上がりが見られた年 でもありました。
さらに当時は屋外であるため、聞こえやすいように 音を出す専用のピストル を使っていました。
「ピストルがプールの硬き面にひびき」の表現技法と鑑賞
句切れなしこの句には句中に意味が切れる場所がないため、 「句切れなし」 と呼びます。
この句の ピストルの音の様子 に着目してください。
「ピストルの音がひびく」と完了せず、「ひびき」と継続している様子になっています。
つまり、句切れなしにすることによって 緊張感とそれがはじけた様子 が強調されています。
比喩表現の「硬き面」ポイントはこのような 読み手の受け取り方 にあります。
誓子は観客席で競泳を見ながら、 プールの面(水面のこと)を硬いと表現しています。
「ピストルがプールの硬き面にひびき」の鑑賞文
この句は 競技が始まる直前までの緊張感と、始まった直後のはじけた様子 を巧みに表現しています。
ピストルの音という一点を切り取ることで、 静けさと熱気という相反するものを表現し、目の前で見ているような臨場感を味わえる句 になっています。
「ピストルがプールの硬き面にひびき」の補足情報
日本での近代的な水泳日本では 1918 年(大正 7 年)に大阪市南区の小学校が連合して、堺市の海岸で約 4000 人に 水泳訓練を始めたのが最初 とされています。
本格的な普及はもう少し後のことで、 1955 年に発生した紫雲丸事故及び橋北中学校水難事件で多くの児童生徒が溺死したことから、 水泳教育の必要性 が説かれて水泳の授業が普及していきました。
現在では、 9 年間の義務教育課程である小学校および中学校で、水泳教育が適切な水泳場を確保できない場合を除き必修化され「体育」の授業で水泳が行われています。
作者が聞いたピストルの音このような競技の開始を告げるものを 「スタートピストル」 と呼び、単発式・双発式・電子式の3種類の方式があります。
【単発式】 雷管を一発ずつ装填、破裂させる方式。汎用性も高く入手しやすいが、号砲発射の度に雷管を詰め替える必要があるため、1発ずつになる。
【双発式】 雷管を二発装填、二発破裂させる方式。この音は微妙にずれがあり、「パパン」という音がする。
【電子式】 火薬を用いず、「ピッ」という合成された電子音をスタート音として用いる方式。複数のスピーカーボックスを置いて一斉にスタート音を鳴らすこともできる。近年ではこちらが主流になっている。
そうなると、 単発式の1発だけのスタートピストルの音を聞いた可能性が高い でしょう。
作者「山口誓子」の生涯を簡単にご紹介!
山口誓子( 1901 ~ 1994 年)。誓子は「せいし」と読み、本名は新比古(ちかひこ)。京都府出身です。
35歳頃に水原秋桜子の俳誌「馬酔木」へ移ってからは、新興俳句運動の中心として活動します。戦後も俳壇で活躍し、 1992 年には文化功労者に選ばれています。
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- 1 「ピストルがプールの硬き面にひびき」の作者や季語・意味・詠まれた背景
- 1.1 季語
- 1.2 意味
- 1.3 この句が詠まれた背景
- 2.1 句切れなし
- 2.2 比喩表現の「硬き面」
- 4.1 日本での近代的な水泳
- 4.2 作者が聞いたピストルの音
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