カスタードとカスタードクリームは別物!-意外と知らないカスタードの定義・歴史
洋菓子やパンに使われることの多いカスタードクリーム。単にカスタードと呼ばれることもありますが、カスタードとカスタードクリームは実は別物。この二つの違いやカスタードの定義について、カスタードの起源説や歴史について紹介しています。
ちなみに、辞書でカスタードの定義を調べると卵と牛乳だけではなく「砂糖やバニラなどの香料を加える」と説明されているものもありますが、このあたりはマストな条件ではありません。というのも、 キッシュなどに使われるカスタードソースは卵+牛乳+塩で作るレシピもある ため。この材料でもカスタード(ソース)と呼ばれていますから、カスタードと呼ぶ最低限の材料は卵と牛乳もしくは生クリームなどで卵を希釈するものと捉えられます。
カスタードソースとカスタードクリームの違いまずカスタードソース。 こちらは 卵と牛乳を混ぜて液状もしくはペースト状にしたもの。砂糖やバニラエッセンスを入れて甘い風味を付けることが多いですが、上記で紹介した料理用に使用するカスタードソースであれば甘みのないものもあります。 増粘剤の役割をは果たすものが卵だけのため、カスタードクリームと比較するととろみがなくシャバシャバしていることが特徴。フランス語でクレーム・アングレーズ(crème anglaise/イングランドのクリーム)と呼ばれるものもカスタードソースの一種です。
次にカスタードクリーム。 カスタードクリームはカスタードを使用した料理の一種という扱い。 カスタードソースにコーンスターチまたは小麦粉などを加える、半固形(クリーム)状にしたものを指します。 クリームパンやシュークリームの中に入っている、おなじみの通称“カスタード”ですね。フランス語ではクレーム・パティシエール(crème pâtissière)。
- カスタードソース→材料を混ぜ終わった後に全体を火にかける
- カスタードクリーム→卵・砂糖・小麦粉を混ぜ合わせたものに、温めた牛乳を数回に分けて混ぜながら加えていく
カスタードを使用したソース/クリーム類、それを使用したレシピは世界中に数多く存在しています。日本でもシュークリームやパン類をはじめ、今川焼・たい焼き・饅頭などの和菓子類にも使われていますよね。洋菓子類であればカスタードクリームが使われているケーキやタルト類もカスタードに含まれるものとして扱われますし、 お馴染みのプリンも正確に言うならば“カスタードプディング”でカスタードの一種。もちろんクリームブリュレもカスタードです。
プリン以外にもカスタードクリームが使用されている以外のカスタード類お菓子は結構あります。カスタードにゼラチンを加えることで作られるババロア(クレームババロワーズ)、バニラアイスクリームなどもカスタードの一種に含まれています。エッグノッグなどの飲み物類も、広い捉え方だとフレンチトーストやチーズケーキも、すべてカスタードの一種として括られます。
そのほかに食事系レシピではキッシュのほか、カルボナーラやグラタンもカスタードを使用する料理に含められています。英語版wikipediaでは牛乳を使わないはずの茶碗蒸しについても“Chawanmushi is a Japanese savoury custard”と紹介されています[2]から、英語圏の方にとっては日本人の思っている以上にカスタード(custard)という言葉の幅は広いのかもしれません。
カスタードの歴史
カスタード発祥は古代ローマ?カスタード、卵と牛乳を混ぜて凝固させたものがいつから食べられていたのかは分かっていません。少なくとも古代ローマでは卵の凝固特性が知られ、それを活用した料理法が使われていたことが分かっているため、さかのぼれる範囲として古代ローマ発祥と紹介されることもあります。
とは言え、古代ローマで食べられていた“古代のカスタード”は私たちの思うカスタードソース/カスタードクリームとは別物。 古代ローマ時代の代表的なレシピとしてローマカスタードとも称される“Tyropatinam”がありますが……西暦4~5世紀の間に書かれた『アピシウス(De re coquinaria)』 にある“Tyropatinam”のレシピは蜂蜜・牛乳・卵を混ぜ合わせたものを固まるまで加熱しコショウををふりかけて盛り付けるというもの[3]。どちらかと言うと、卵と牛乳を混ぜて焼いたオムレツもしくはケーキに近いものが出来上がりそうですよね。
時代と共に現在のスタイルに歴史のあるカスタードレシピとして名前が挙がるのは“フラン”。メキシコなど中南米で食べられているプリンタイプではなく、ヨーロッパで食されているカスタードタルトのような焼き菓子です。フランの名の由来はラテン語で平田威を意味するfladoという言葉が語源で、料理としてのルーツはローマの“Tyropatinam”にあると言われています。フランスやスペインでは“Tyropatinam”からアレンジされたフラン、そして様々なフランのアレンジレシピが誕生し親しまれるようになっていきます。
中世ヨーロッパでフラン・カスタードタルト系の料理は親しまれ、16世紀頃からはペストリーケースではなくカップやお皿に直接カスタードを入れたプディングに近い調理法も広まっていきます。 オーブンが進化した17世紀~18世紀頃になると更なるアレンジが行われていきました[4]。 直火だと困難な部分もあったと考えられますから、オーブンを使うことで幅が広がったのでしょう。砂糖が入手しやすくなった関係もあってか甘さを押し出しお菓子に特化したレシピも登場しています。
また、 1600年代半ばから1800年代半ばまで期間にイギリス・英語圏では“creams”と呼ばれる攪拌タイプのカスタードソースが作られ、料理やケーキに添えられていたようです[5]。 1747年にイギリスで出版された料理本『The Art of Cookery Made Plain and Easy』には“Baked custards”としてカップに入れたカスタードを焼くというレシピが、1830年の『The Cook’s Oracle』には“Custard Pudding”として日本で言うところの焼きプリンのレシピなども登場しています。
19世紀にカスタードパウダーも登場インスタントカスタードパウダーは牛乳で溶くだけ、もしくは溶いてから加熱するだけでカスタードクリームが出来るという便利なアイテム。日本でも富澤商店さんやネスレさん他色々なメーカーさんが販売されています。手軽なインスタント感から新しい商品のように思いがちなカスタードパウダーですが、実は最初に考案されたのは1837年とかなり昔。日本がまだ江戸時代の頃の事です。
カスタードパウダーを発明したのはイギリスの薬剤師兼科学者だったアルフレッド・バード(Alfred Bird)氏。彼の奥様のエリザベスさんは卵と酵母の両方にアレルギーがあり、彼女でも食べられるように卵の代わりにコーンスターチを使ったレシピを開発したと伝えられています。有名なカスタードパウダーが“Bird’s Custard”でなぜ鳥?と思っていたのですが、鳥ではなくて開発者の名前だったんですね。ちなみにアルフレッド・バード氏の息子さんはゼリーパウダーを発明しているとか…。