天然酵母とイーストの違いとは?パン酵母の種類や使い分けのコツ
パンに欠かせない材料の中で特にわかりにくい「酵母・イースト・天然酵母」の違い。パン作りをもっと楽しみたい方に種類ごとの特徴もあわせて徹底解説します。
パンの発酵の仕組みと役割は?発酵方法の手順や膨らまない際の6つの原因 【執筆者】 川崎 一文 【資格】1級製パン技能士、製菓衛生師、職業訓練指導員 大学卒業後、大手流通業の食品部門でパン作りを始まる 3社で店長等を歴任後、専門学校の.
ちなみに、イーストと同じく広く使用されているパン酵母に天然酵母がありますが、天然酵母も酵母の1種です。
【パン酵母の比較表】天然酵母とイーストの違い
発酵力天然酵母は、 自然界にある複数の酵母が混ざったもの です。発酵に関係ない酵母も含まれるため、多くの場合発酵力が弱く安定しません。 酵母を一から培養すると焼き上がりまで1週間以上かかります 。
イーストは、 パン作りに適した1種類の酵母を培養したもの です。パンの発酵に特化した酵母の集合体なので、安定した強い発酵力から短時間でパンが焼き上がります。
風味天然酵母を使用すると、奥深く複雑な味わいのパンが焼き上がります。ゆっくりと時間をかけて発酵させるため小麦本来の味が引き出され、噛めば噛むほど深い味わいを楽しめます。
イーストで焼いたパンはイースト臭が特徴です。酸っぱいような、アルコールのような独特の香りがあります。
食感クラム(※)も気泡が少なくて小さく、目が詰まったパンが焼き上がります。
(※)クラム・・・パンの内側の白い部分のこと。外側の焼き色がついた部分は「クラスト」。イーストの場合は、柔らかくて軽い食感のパンが特徴です。パンの発酵に適した単一の酵母なので、強い発酵力がふんわりとした食感を生みます。
カロリー・栄養天然酵母とイーストのどちらを使用しても、 パンのカロリーと栄養には影響はありません 。
カロリーや栄養は、配合されている小麦粉や砂糖、卵、油脂など材料の種類や量で決定するという見解が大半です。
健康への影響 天然酵母 イースト 健康への影響 影響なし (無添加の場合が多い) 影響なし (ただし食品添加物が含まれる場合あり)天然酵母とイーストのどちらを使用しても、 健康への影響はありません 。
もちろん 天然酵母でも添加物が含まれる場合や、イーストでも添加物を含まないなど一部例外 もあります。
天然酵母やイーストへの食品添加物の使用・不使用は、商品によって異なるため、気になる場合は商品の原材料表示に乳化剤や保存料が記載されていないか確認しましょう。
使い方・使いやすさ 比較項目 天然酵母 イースト 使い方 種おこしや予備発酵が必要 種おこし不要 使いやすさ 手間がかかる 使いやすい こね始めまでにかかる時間 1週間以上 0~10分自宅で素材から天然酵母を作る場合、酵母を培養する手順(種おこし)が必要です。種類にもよりますが、パン生地をこねるまでに長いと1週間以上かかってしまいます。温度管理などに多くの手間がかかる酵母です。
イーストは製品を購入すれば、すぐパン生地をこねる作業に入れます。予備発酵が必要なイーストでもかかる時間は約10分です。使いやすく、思いついたときに使えるフットワークの軽さがあります。
しかし、 時間がかかる種おこしが不要のドライタイプの天然酵母も多く販売 されており、天然酵母やイーストも豊富な種類から選択可能になりました。
(※)リーンなパン・・・粉・酵母・塩・水の基本材料で作られるシンプルなパン。フランスパンやカンパーニュ、ライ麦パンなど。少量の砂糖や油脂が入る場合もある。 手間暇かけたこだわりのパン作り:自家製天然酵母自家製天然酵母は、 発酵状態の見極めが難しい酵母 です。
酵母を培養するだけで 1 週間以上かかります。培養中は腐敗しないように温度や衛生管理にも注意が必要です。パン生地をこねた後も発酵力が強くなく安定しないため、コントロールが難しく、細かい状態チェックが欠かせません。
種おこしから焼き上がりまで多くの手間と暇がかかりますが、天然酵母独特の風味や奥深い味わいは最大の魅力です。唯一無二のパンを作りたい方や、自宅で酵母作りから挑戦したい方におすすめです。
天然酵母初トライの味方:ドライタイプの天然酵母種おこしにかかる1週間以上の時間と手間を省き、 自宅で手軽に天然酵母を使用できるのがドライタイプの天然酵母 です。培養させた天然酵母を乾燥させて販売されています。
製品によって発酵力や香り、風味も異なりますので、酵母の特徴を十分に引き出せる食パンなどの副材料の少ないリーンなパンがおすすめです。
保存はきかないが万能タイプ:生イーストイーストの中では、酸っぱいようなアルコールのような独特のイースト臭が少ない種類です。 どんなパンでも使えます が、砂糖を多く配合している生地に強く、ふんわりと柔らかいパンが焼けます。
保存期間が約2週間と短い のが欠点です。主に使用量の多いパン屋で愛用されていますが、小分けされた商品も市販されています。頻繁にパンを焼く方におすすめです。
前準備が必要だが長期保存できる:ドライイースト生イーストを低温で長時間乾燥させたパン酵母です。酵母を休眠状態にしているため、 使用前にはぬるま湯に溶かして覚醒させる 必要があります。予備発酵の手間はかかりますが、長期保存できるのは嬉しいポイントです。
砂糖が多く含まれている生地には弱い ため、フランスパンなどハード系のパン(※)に使うと香りや風味のよさを楽しめます。
(※)ハード系のパン・・・クラストと呼ばれるパンの外側が硬く、パリっとした食感のパン。粉・酵母・塩・水の基本材料を使い(リーンなパン)、長時間発酵させる場合が多く、小麦の風味が味わえる。 手軽で簡単:インスタントドライイーストインスタントドライイーストは、生イーストを短時間で乾燥させ、乳化剤(※)を加えています。ドライイーストより 粒が細かく、そのまま小麦粉に混ぜて使用可能 です。予備発酵の必要もありません。
(※)乳化剤・・・混ざりにくい水と油を均一にし、材料に分散させやすくするために使用する添加物。パンの柔らかさを維持する働きもある。初心者でも簡単にパンが作れるため、家庭で最も使用されています。通常タイプと砂糖を多く含む生地に向いた耐糖タイプの2種類が販売されているため、生地によって使い分けが可能です。
生イーストとインスタントドライイーストのいいとこ取り:セミドライイーストセミドライイーストは比較的新しいイーストで、世界シェア No.1 のフランスイーストメーカー「ルサッフル社」の商品です。 生イーストのイースト臭のなさや豊かな香りと、インスタントドライイーストの使いやすさ を兼ね備えています。
インスタントドライイーストと同じく通常タイプと耐糖タイプの 2 種類があり、使い分けが可能です。冷凍なら製造から2年は保存ができます。
値段は商品によって異なる 天然酵母 イースト 値段 自宅で手作り:0~200円ほど 市販品:700~2,000円ほど ※種類や商品による 300~2,000円ほど ※商品による値段は商品やお店によって異なるため、 どちらが安い・高いとは一概には言えません 。
少量パックより量が多い方がお買い得ですが、 開封後は酵母の発酵力が徐々に落ちてしまう ため、パン作りの頻度に合わせて購入しましょう。
酵母・イースト・天然酵母の種類
- パンに利用される酵母はサッカロマイセス・セレビシエ
- イーストは4種類
- 天然酵母は2種類
多種多様な酵母菌の中で、パンに利用される酵母はサッカロマイセス・セレビシエ(※)です。
(※)サッカロマイセス・セレビシエ・・・酵母の1種。細胞を芽のように出して増えるため出芽酵母とも呼ばれる。イーストと天然酵母は、どちらもサッカロマイセス・セレビシエに分類 されます。
ビール酵母がパンの発酵にも利用できるのは、元となる酵母が同じためでしょう。
イーストは4種類- 生イースト
- ドライイースト
- インスタントドライイースト
- セミドライイースト
作りたいパン生地やパン作りの頻度で使い分けるのがおすすめ です。
インスタントドライイーストとセミドライイーストには通常タイプと、砂糖の多い生地に向く耐糖タイプがあり、パン生地によって使い分けが可能です。インスタントドライイーストは広く普及しているため手に入りやすく、セミドライイーストは冷凍で製造から 2 年保存できます。
天然酵母は2種類さまざまな種類がある天然酵母を大きく分けると、自家製タイプとドライタイプの2種類があります。
パン作りに使える時間と手間で使い分けるのがおすすめ です。
自家製天然酵母に使われる素材- ドライフルーツ(レーズン・プルーン・いちじくなど)
- 果物(リンゴ・バナナ・いちごなど)
- 穀物(小麦粉・ライ麦・米など)
- ハーブや花(桜・ローリエ・ホップなど)
- その他(ヨーグルトなど)
自宅で種おこしをする場合に 一般的なのは、ドライフルーツや生の果物を素材にした果実種 です。
日本酒造りを参考に作られた酒種も天然酵母に含まれます。
ドライタイプの天然酵母の商品製品によって焼き上がりの風味が異なります 。種おこし(※1)や予備発酵(※2)が必要なものや、そのまま粉に混ぜて使用できるものもあり、使い方もさまざまです。
- 身近な場所で購入するなら『スーパー』
- 他の酵母も実際に見て決めたいなら『製菓製パン材料店』
- 確実に素早く手に入れたいなら『オンラインショップ』
製菓コーナーや小麦粉のコーナーで販売されています。 普段の買い物ついでに購入できる のは大きなメリットです。
しかし、 取り扱いの種類が少ない場合や、パン酵母を販売していない場合も あります。大規模スーパーなら取り扱う種類は多い傾向ですが、一般的なインスタントドライイースト以外の酵母が置いてあるとは限りません。
他の酵母も実際に見て決めたいなら『製菓製パン材料店』イーストだけでなく、ドライタイプの天然酵母も複数取り扱っています。手に取って形状や原材料表示を確認できる他、 スタッフに使い方やおすすめを聞ける 点もメリットです。
しかし、 製菓製パン材料店が身近にない場合も あります。遠出しなくてはいけない場合は、面倒に感じてしまうかもしれません。
確実に素早く手に入れたいなら『オンラインショップ』ネット上で注文でき、 外出することなく受け取り ができます。オンラインショップにもよりますが、最速で翌日配送が可能なので素早く確実に手に入る方法です。
当日配送はまだ難しい場合が多く、パン作りをする前にあらかじめ注文しておく必要があります。 商品代とは別に送料がかかる 点は注意しましょう。
酵母・イースト・天然酵母に関する3つの質問
- Q1:天然酵母とイーストはどちらが体にいい?
- Q2:天然酵母とイーストは併用できる?
- Q3:イーストフードは酵母なの?
A :天然酵母もイーストも、 体に良い悪いという差はありません 。
健康への影響は、 酵母やパンの配合に添加物が含まれていないか原材料表示を確認 しましょう。酵母の場合は保存料やビタミンC、パンならイーストフードや乳化剤などの名前が添加物として記載されています。
Q2:天然酵母とイーストは併用できる?A :併用できます。
天然酵母とイーストの併用は、メーカーやパン屋でも行っている製法の1つ です。
ふんわりとした食感で、奥深く複雑な味わいのパンを焼くならおすすめの製法です。
Q3:イーストフードは酵母なの?A :酵母ではありません。添加物です。
イーストフードは、パン酵母の栄養源となり発酵を助ける働きを持つ添加物の総称 です。
パンの品質や食感の向上、パンの劣化を遅らせるなどの目的で使用されています。国にも安全性や有用性が認められ、 食品衛生法でも使用が許可されている 添加物です。
食品の安全面や健康面で問題はありませんが、イーストフードが使われているか気になる場合は、原材料表示を確認しましょう。
酵母とイーストに違いはないが、天然酵母とイーストには違いがある!
酵母とイーストに違いはなく同じものです。しかし、天然酵母とイーストを比較すると、それぞれ強みや欠点があることがわかります。- 発酵力が弱く不安定
- 噛み応えがあり、複雑で奥深い風味が感じられるパン
- 手間と時間がかかる
- 強く安定した発酵力
- イースト臭はあるが、柔らかくて軽いパン
- こね始めるまでに時間がほとんど必要ない
両者に優劣はなく、特徴を生かした美味しいパンを焼ける ことにも違いはありません。パン酵母の特性を知ることでパン作りの幅も広がります。それぞれの違いを理解して、ご自宅で理想のパン作りを楽しんでくださいね。
執筆者棚網 義幸 年間500個のパンを食べるパン好き。パンが好き好きすぎて2022年に白神こだま酵母(天然酵母)でパンを作っている株式会社サラ秋田白神に入社。毎朝天然酵母パンを食べて、休日はパン屋巡りをしています。
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