オルフ「カルミナ・ブラーナ」解説とおすすめの名盤
『カルミナ・ブラーナ』はドイツの作曲家カール・オルフ(1895-1982)が1936年、41歳の時に書き上げた世俗カンタータです。今回の記事では本作品の作曲の背景と楽曲解説、おすすめの名盤をyoutube動画を交えながらわかりやすくご紹介しています。
おお運命の女神よ!月のように絶えず姿を変え 満ち欠けをくりかえす者よこのいやな人生は 気ままに 抑えつけたり なだめたりする貧乏も権力も 氷のようにとかしてしまうおぞましく空虚な運命よ お前は回転する車輪のように悪意に満ち 幸福を無にする影に隠れて 私を苦しめ 私は丸裸でお前の術中に落ちる運命は健やかさも力強さも奪い 私を渇望と失望のとりこにする今こそ時をおかず弦をかき鳴らせ 運命は強者をも打倒するのだから皆の者 我と共に嘆こう!
ベルリン・フィル、ジルヴェスターコンサート(1989)NHK放送用字幕より引用 運命の女神の痛手を(02:34)合唱が運命の女神のかつての栄光を振り返り「華やかな至福の時も今は昔」と嘆きつつも「運命の女神の車は回る・・頂にある王よ、破滅を恐れよ」と忠告します。
第1部:初春に 春の愉しい面ざしが(05:45) 万物を太陽は整えおさめる(09:37)バリトンの独唱が「太陽が清く優しく万物を暖め、四月が新しい世界にその姿を示す」と歌いますが、ここでもまだ春の陽気さは感じられません。
「私の心のすべてはお前と共にある、このように恋する者は誰であれ、苦悩の車輪に振り回される」と春の喜びを歌いながらも恋に懊悩する若者を歌う切ない調べが続きます。
見よ、今は楽しい(11:30)ここにきてようやく合唱が春の喜びを感じさせる明るい曲想の調べを奏でます。心が沸き立つようなティンパニのリズムに乗せて「悲しみはもはや去った!夏は戻り、冬の厳しさは遠ざかる!」と合唱が歌います。
芝生の上で 踊り(14:23) 森は花咲き繁る(16:14)「森は見事に花開き、木々の葉が萌え出ている」と再び合唱が加わり、春の喜びを歌います。しかしここでも恋焦がれた人がどこかへ行ってしまった悲哀も同時に歌っています。
小間物屋さん、色紅を下さい(19:30)馬車が走るかのような軽快な鈴(スレイベル)の音に導かれ、合唱が「お店の方、頬紅をくださいな、若い男の恋心を誘うために」と陽気に歌います。
円舞曲: ここで輪を描いて回るもの – おいで、おいで、私の友だち(23:15)柔らかな響きのオーケストラの円舞曲に続いて、弦楽器のピチカット(指で弦をはじく奏法)に乗って合唱が「ここで輪になって踊るのは、皆、乙女たち、彼女らは夏中男を相手にしない」と歌います。
次いで合唱が「おいで、おいで、僕の恋人、僕は君を待ち焦がれている」と静かに歌います。合唱の繰り返しをブリッジするようにフルートの美しい調べが挿入されます。
たとえこの世界がみな(28:11)金管楽器の力強いファンファーレとホルンの勇壮な調べに導かれ合唱が「海からライン川まで全世界が我が物だとしても、私は喜んで投げ出すだろう、イギリスの女王様をこの腕に抱けるなら」と壮麗に歌い上げます。
第2部:酒場で 胸のうちは、抑えようもない(29:04)激しいトリルと馬が駆けるようなオーケストラのリズムに導かれ、バリトンのソロが「激しい怒りを胸にたぎらせ、私は自問する、吹けば飛ぶようなこの私、風にもてあそばれる木の葉同然」と自嘲気味に歌います。
昔は湖に住まっていた(31:29)ファゴットのソロが高音域で奏でる奇怪な旋律に導かれ、テノールがハイトーンで「昔、私は湖に住んでいた、昔は私も美しい姿だった、白鳥だった時には」と歌いだします。
このテノールの独唱に呼応するように合唱が「何てことだ!今じゃ真っ黒にローストされる身!」とシュールな歌詞を返します。
わしは僧院長さまだぞ(34:40)バリトンの独唱が不気味な歌声で「我こそは怠け者の楽園の僧正!」と歌います。これに合いの手を入れる打楽器はシンバル、鐘、小太鼓などを含む大掛かりなものです。
バリトンの独唱と合唱が交わす劇的なやり取りは「下らぬ運命よ!何をしてくれた!人生の楽しみを根こそぎ持っていきやがって!」と歌う独唱に対して「ああ!何てことだ!」と合唱が呼応しています。
酒場に私がいるときにゃ(36:11)弦楽器が刻むリズミカルな伴奏に乗って合唱が「我らは居酒屋では来世を気にせず、賭け事に汗を流す」と歌います。
第3部:愛の誘い 愛神はどこもかしこも飛び回る(39:13)フルートの優しく穏やかな調べに導かれ少年合唱が「愛の神は至る所に飛んでいく」と歌います。続いてソプラノの独唱が若い男女の恋心を美しく歌い上げます。
昼間も夜も、何もかもが(42:27) 少女が立っていた(44:28)「娘が一人立っていた。赤いブラウスを着て。誰かが触るとブラウスはサラサラ音をたてた」とソプラノ独唱が艶のある歌声で歌います。
私の胸をめぐっては(46:11)バリトンの独唱が「私の心は溜息で一杯だ、あなたの美しさに私の心は痛む」と朗々と歌います。その独唱を煽り立てるように刻まれるピアノとオケに乗って「私の恋人は来ない」と合唱が加わります。
もし若者が乙女と一緒に(48:16)無伴奏の合唱が「もし若者と娘が二人きりで小部屋に居られたら、それは幸せ」と力強く歌います。
おいで、おいで、さあきておくれ(49:33)ピアノが刻む前奏に続いて合唱が「おいで、おいで、来ておくれ」と歌います。ここでも多彩な打楽器が旋律に鮮やかな彩りを添えています。
天秤棒に心をかけて(50:33)ソプラノの独唱が「迷う心の秤は揺れる」と穏やかに美しく歌います。このあたりからソプラノ独唱の見せ場が続きます。
今こそ愉悦の季節(52:40)「歓喜の時は来た!おお!乙女たち!若者たちよ、一緒に楽しもう!」と合唱が高らかに朗らかに歌います。カスタネットの軽快なリズムに乗せてバリトンの独唱が「私は全身がはちきれそう、乙女への恋に体中が燃える」と続きます。合唱の繰り返しの後はバリトンが奏でた旋律をソプラノと少年合唱がなぞります。
とても、いとしいお方(54:52)無伴奏のソプラノ独唱が「いとしい君よ」と歌い上げます。ソプラノの一番の見せ場です。
ブランツィフロール(白い花)とヘレナ アヴェ、この上なく姿美しい女(55:33)オーケストラと合唱が壮麗な響きで「ようこそ、最も美しい人」と奏でます。クライマックスにふさわしい感動的な部分です。
全世界の支配者なる運命の女神 おお、運命の女神よ(57:23)ブラヌス写本 (カルミナ・ブラーナ)匿名 – http://daten.digitale-sammlungen.de/bsb00085130/image_5, パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=202349による
オルフ「カルミナ・ブラーナ」YouTube動画
カール・オルフ:「カルミナ・ブラーナ」全世界の支配者なる運命の女神(00:03)第1部:初春に(05:45)芝生の上で(14:23)第2部:酒場で(29:04)第3部:愛の誘い(39:13)ブランツィフロール(白い花)とヘレナ(55:33)全世界の支配者なる運命の女神(57:23)
ロシア・フィルハーモニー管弦楽団
piccoloのツボ!ここを聴いて!
このコーナーでは今回ご紹介した作品の中から「ぜひここを聴いて欲しい!」と言う管理人piccoloの独断と偏見によるツボをご紹介しています。
「全曲聴くのは長すぎて・・・」と感じられるクラシック初心者の方はぜひここだけでも聴いてみて下さい。
今回の「piccoloのツボ!」は作品の終盤、ソプラノ独唱の「とても、いとしいお方」から「ブランツィフロール(白い花)とヘレナ」へ至る部分です。
まさに「歌い上げる」と言う表現がピッタリのソプラノ独唱に続く「ブランツィフロール(白い花)とヘレナ」の壮麗さがこれまた見事です。
合唱:ようこそ、最も美しい人 貴重な宝石 ようこそ、乙女たちの誇り 栄光の乙女 ようこそ、この世の光 この世の薔薇 ブランツィフロールとヘレナ 高貴なヴィーナス!
「ベルリン・フィル、ジルヴェスターコンサート(1989)NHK放送用字幕」より引用クリスティアン・アルミンク指揮:リエージュ王立フィルハーモニー管弦楽団ソプラノ:チェン・レイス
オルフ「カルミナ・ブラーナ」おすすめの名盤
小澤征爾指揮:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団【収録情報】小澤征爾指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団エディタ・グルベローヴァ(ソプラノ)ジョン・エイラー(テノール)トーマス・ハンプソン(バリトン)晋友会合唱団ベルリン・シュターツ&ドム少年合唱団録音:1988年
★こちらのアルバムは「Amazon Music Unlimited」でもお楽しみいただけます!
小澤征爾は日本の晋友会合唱団を率いて2度にわたってベルリン・フィルとこの作品を演奏しています。
1回目は1988年6月の定期演奏会、そして2回目は翌1989年の大晦日にベルリン・フィル恒例のジルヴェスターコンサートでこの作品を演奏しています。
CD版とDVD版はそれぞれソリストのキャストが異なり、特にソプラノはCD版ではエディタ・グルベローヴァ、DVD版ではキャスリーン・バトルと豪華なキャストとなっていてどちらも楽しめます。
CD版の方では当時42歳のまさに絶頂期と言って良いグルベローヴァの美しい歌声も堪能できます。「ブランツィフロール(白い花)とヘレナ」の前の独唱で聴かせる絹糸のような美しい弱音は鳥肌ものです。
オルフ「カルミナ・ブラーナ」より小澤征爾指揮:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団ソプラノ:エディタ・グルベローヴァ オイゲン・ヨッフム指揮:ベルリン・ドイツ・オペラ管弦楽団【収録情報】オイゲン・ヨッフム指揮ベルリン・ドイツ・オペラ管弦楽団&合唱団グンドゥラ・ヤノヴィッツ(ソプラノ)ゲルハルト・シュトルツェ(テノール)ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(バリトン)シェーネベルク少年合唱団録音時期:1967年10月
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ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウの歌唱もかなり刻んだ印象が強く、その素晴らしい歌声には魅了されますが、テノールのゲルハルト・シュトルツェがこの作品の持つ奇怪で野卑な雰囲気を前面に出して歌っているのに対し、ディースカウのあまりにも朗々と気持ちよく響く歌声にややミスマッチを感じます。
オルフ「カルミナ・ブラーナ」よりオイゲン・ヨッフム指揮:ベルリン・ドイツ・オペラ管弦楽団 ジェイムズ・レヴァイン指揮:シカゴ交響楽団【収録情報】ジェイムズ・レヴァイン指揮シカゴ交響楽団ジューン・アンダーソン(ソプラノ)フィリップ・クリーチ(テノール)ベルント・ヴァイクル(バリトン)シカゴ・シンフォニー・コーラスグレン・エリン児童合唱団録音:1984年
★こちらのアルバムは「Amazon Music Unlimited」でもお楽しみいただけます!
合唱もやや柔らかな響きでこの作品が持つ原始的で野卑な雰囲気はあまり感じられません。ソプラノのジューン・アンダーソンは伸びやかな声で印象的ですが、テノールのフィリップ・クリーチはやや張り気味で力が入っているような印象を受けました。
オルフ「カルミナ・ブラーナ」よりジェイムズ・レヴァイン指揮:シカゴ交響楽団「Amazon Music Umlimited」で「カルミナ・ブラーナ」を聴き比べ!
★「Amazon Music Unlimited」では次のようなアーティストの「カルミナ・ブラーナ」を聴き放題で楽しむことが出来ます。
※下記の検索結果は本記事の投稿日現在、「Amazon Music Unlimited」で「Carl Orff Carmina Burana」「カルミナ ブラーナ」などのキーワードで検索した例です。すべての録音を表示しているわけではありませんのでご了承ください。
「オイゲン・ヨッフム&ベルリン・ドイツ・オペラ管」「クリスティアン・ティーレマン&ベルリン・ドイツ・オペラ管」「小澤征爾&ベルリン・フィル」「アンドレ・プレヴィン&ウィーン・フィル」「ギュンター・ヴァント&北ドイツ放送響」「オイゲン・ヨッフム&バイエルン放送響」「ミシェル・プラッソン&トゥールーズ・キャピトル国立管」「アンドレ・プレヴィン&ロンドン響」「アンタル・ドラティ&ロイヤル・フィル」「クリスチャン・ヤルヴィ&MDR交響楽団」「クルト・プレステル&モーツァルテウム管」「リコ・サッカーニ&ブダペスト・フィル」「ジェイムズ・レヴァイン&シカゴ響」「ヘルベルト・ブロムシュテット&サンフランシスコ響」「オーマンディ&フィラデルフィア管」「ストコフスキー&ヒューストン響」「レナード・スラットキン&セントルイス響」「シャルル・デュトワ&モントリオール響」「小林研一郎&日本フィル」他
「おすすめの名盤」でご紹介した「小澤征爾&ベルリン・フィル」「オイゲン・ヨッフム&ベルリン・ドイツ・オペラ管」「ジェイムズ・レヴァイン&シカゴ響」以外では、「クリスティアン・ティーレマン&ベルリン・ドイツ・オペラ管」「シャルル・デュトワ&モントリオール響」も録音状態も良く聴きやすい感じでしたが、あまり個性は感じられませんでした。
「アンドレ・プレヴィン&ロンドン響」盤はソリスト(テノール)、オケのフレージング共に個性が強く、この作品が持つ奇怪な雰囲気を味わうのに面白い録音です。
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まとめ
カール・オルフ作曲の「カルミナ・ブラーナ」いかがでしたでしょうか?
数百年の時を経ても変わらない「若者の怒り」「虚無感」「恋や愛」「酒や性」をテーマにした歌詞が生々しく、そして人間臭くも感じられます。
「冒頭の部分以外は聴いたことがない」そんなクラシック初心者の方もたくさんいらっしゃると思います。ぜひこの機会に全曲を通して聴いていただければと思います。
演奏時間は1時間近い大作なので「ちょっと長いな?」と感じられる方は「piccoloのツボ!ここを聴いて!」だけでも聴いてもらえたらうれしいです。
最後までお読みいただきありがとうございます。こちらの作品もぜひ聴いてみてください!
マーラー|交響曲第2番「復活」歌詞と解説、おすすめの名盤 🕒️2019年3月31日 ドヴォルザーク「スターバト・マーテル」【解説と名盤】 🕒️2020年5月10日お役に立ちましたらクリックをお願いします。
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