犬のマダニ症~症状・原因から治療・予防法まで
犬のマダニ症~症状・原因から治療・予防法まで

犬のマダニ症~症状・原因から治療・予防法まで

【1ページでまるわかり】犬の皮膚の病気である「マダニ症」について病態、症状、原因、治療法別に解説します。獣医さんに飼い犬の症状を説明するときの参考にしてください。

ダニは基本的に1年中生息していますが、季節によってピークがあるようです。 2009年3月から10月の期間、英国内にある173の動物病院に協力を仰ぎ、1週間のうち5頭をランダムで選び出してダニを保有しているかどうかが調査されました(F.D.Smith, 2011)。その結果、3,534頭の犬のうち少なくとも1匹ダニを保有していたのは23%(810頭)に及んだといいます。さらに症例数を時期ごとに比較したところ、3月が「0.013ケース/日」だったのに対し、6月が最も多く「0.096ケース/日」を記録したとも。 さらに2016年、イギリス国内でダニに食われた犬を対象として行われた調査では、マダニの症例数増加が3月から9月に集中しており、とくに6月の急増が顕著であると報告されています(Ian Wright, 2018)。 ダニの種類や地域によって多少の違いはあるでしょうが、春先から秋にかけてダニが活発になり、特に6月が要注意であることは覚えておいて損はないでしょう。

犬のマダニ症の原因

犬のマダニ症の原因としては、主に以下のようなものが考えられます。予防できそうなものは飼い主の側であらかじめ原因を取り除いておきましょう。 マダニの寄生・吸血 ダニには赤外線が見える!

ダニは映画「プレデター」に出てくるエイリアンのように、赤外線(体温)を感知して獲物の位置を特定できるようです。 2018年、ノースカロライナ州立大学の調査チームは赤外線と白色光を使ってダニの感知能力をテストしました(Robert D. Mitchell III, 2018)。その結果、前脚にあるハラー器官を除去すると赤外線に反応できなくなり、単眼を目隠しすると白色光に反応できなくなることが明らかになったといいます。つまりハラー器官が赤外線を、単眼が白色光を特異的に感知していると言うことです。ハラー器官はクサリヘビ、ニシキヘビ、ボアがもつ「ピット器官」と同様、TRPA1と呼ばれる遺伝子によって作られるのではないかと考えられています。 さらに調査チームがハラー器官を電子顕微鏡レベルで詳細に調べた所、前方ピット、後方カプセルのほか、今まで知られていなかった第三の構造物があることに気づきました(上の写真の奇妙なつぶつぶ)。そしてこの未知の構造物が赤外線の感知に関与しているのではないかと推測しています。ヘビと同じように、たとえ光がなくても獲物の位置を特定できるのは、ダニが上記したような特殊な構造物と能力を備えているからなのですね。厄介です。

ダニが吸い付きやすい場所

ダニは前脚にあるハラー器官を使って獲物の体温(赤外線)を感知し、温かい場所に飛びついてメスの場合は血液をチューチューと吸い取ります。犬の体温は部位によって違いますので、ダニが好む場所と好まない場所があるようです。 まずはダニになりきって犬の体を見てみましょう。これはちょうどサーモグラフィで観察するときと同じ状態です。体温が均一ではないことがおわかりいただけるでしょう。 全体的に頭部、体の前面、四肢の上部(上腕+太もも)などの体温が高いようです。そしてこの体温勾配を忠実に反映するかのように、ダニが食いつきやすい場所にもばらつきが見られます。以下は 2016年、イギリス国内でダニに食われた犬を対象として行われた「咬みつかれやすい場所」に関するデータです。302頭の犬が元データになっています。体温が高い頭部のリスクがとりわけ高いことが一目瞭然です。 また以下は2015年、ギリシア・アテネの路上で倒れていた野良犬「ブロッサム」の画像です。体温勾配に沿ってダニが食いついている様子がうかがえます。ちなみにこの犬は保護された後で無事に回復し、新しい家庭に譲渡されましたのでご安心を。 犬がダニに食われていないかどうかをチェックする際は、体の温かい部分を入念に調べると効率的でしょう。ブラッシングのついでにチェックする習慣をつけておくと忘れることも少なくなります。 犬のブラッシングのやり方

犬のマダニ症の治療

犬のマダニ症の治療法としては、主に以下のようなものがあります。 ダニを取り除く・引き抜く

犬の皮膚に食いついているダニを見つけたら基本的には獣医さんに抜いてもらったほうが無難です。しかしちゃんとしたコツさえつかめば飼い主にもできなくありません。 オハイオ州立大学の調査チームはアメリカイヌカクマダニ(American dog tick)を対象とし、慣習的に用いられているダニ取り方法が本当に有効なのかどうかを検証しました。12~15時間吸着したダニと3~4日吸着したダニに対し、ワセリン、マニキュア、イソプロピルアルコール(70%)、マッチという4つの方法を試したところ、どれ1つとしてきれいに取れるものはなかったと言います。唯一きれいに取れたのは鉗子(先が細いピンセット)を使ったときだけでした。 さらに調査チームは、最も効率的な鉗子の使い方を検証するためローンスターダニ(lone star tick)を用いた比較実験を行いました。「ねじる」「ゆっくり引き抜く」「すばやく引き抜く」「皮膚と平行に引き抜く」という4つの取り方を試したところ、どの方法でも口下片はきれいに抜けたものの、ダニが分泌するよだれ(吸着セメント)までは除去できなかったといいます。 調査チームは、鉗子でなるべく皮膚に近いところを持ち、均一な力で真っ直ぐ引き上げるのが最も効果的であると推奨しています。また吸着セメントや口下片が残ったらそれも引き抜き、刺咬部をよく消毒するようにとも。以下の動画を見ればイメージをつかみやすいでしょう。ただしマダニの体内にはSFTSウイルスを始めとする人獣共通のウイルスを保有している可能性があります。体をつぶすと人間に感染するかもしれませんので、自信がない時やダニの数があまりにも多い時は、いさぎよく動物病院に依頼してください。

殺ダニ薬を投与する

マダニが大量に寄生している場合は、殺虫効果のある滴下薬やスプレー剤の塗布、抗生物質の投与などが施されます。またダニが活発になる時期(3~9月)に合わせ、あらかじめ予防薬を投与しておくことも重要です。 なお犬用のノミダニ駆除薬の中にペルメトリン(Permethrin)と呼ばれる成分を含んでいるものがあります(フォートレオン®など)。この薬を誤って猫に用いてしまうと、最悪の場合では死んでしまうこともありますのでご注意ください。猫を飼っている家庭ではもちろんのこと、犬と猫が同居している家庭においても使用は避けた方がよいでしょう。理由は、猫が犬の皮膚を舐めることで薬剤を吸収してしまう危険性があるためです。 猫のペルメトリン中毒(姉妹サイト) 犬の寄生虫対策・完全ガイド

フェロモントラップ?

光によってダニを集める商品は既に流通していますが、次世代のダニトラップには「フェロモン」が使われるようになるかもしれません。 2017年、インドのマドラス獣医大学の調査チームは、人工的に生成したダニフェロモン(グアニン25+キサンチン1+アデニン1)を使い、ダニの幼虫、幼体、成虫を対象とした誘引テストを行いました。その結果、24時間以内に幼虫、幼体、成虫の100%(合計952匹)がフェロモントラップにまんまとかかったといいます(R.K. Anish, 2017)。 人工フェロモンは副作用の危険性がある殺ダニ成分を含んでいないため、家の中に常備するタイプの商品として使えるのではないかと期待されています。今後の展開に期待です。