室生犀星 「三月」「ふるさと」「寂しき春」(詩集『抒情小曲集』より)
室生犀星 「三月」「ふるさと」「寂しき春」(詩集『抒情小曲集』より)

室生犀星 「三月」「ふるさと」「寂しき春」(詩集『抒情小曲集』より)

三月うすければ青くぎんいろにさくらも紅く咲くなみに三月こな雪ふりしきる雪かきよせて手にとれば手にとるひまに消えにけりなにを哀しと言ひうるものぞ君が朱なるてぶくろに雪もうすらにとけゆけりふるさと雪あたたかくとけにけりしとしとしとと融けゆけりひ

芝草 名は芝草というけれど、 その名をよんだことはない。 それはほんとにつまらない、 みじかいくせに、そこら中、 みちの上まではみ出して、 力いっぱいりきんでも、 とても抜けない、つよい草。 げんげは紅い花がさく.

金子みすゞ 「春の朝」「足ぶみ」「ふうせん」「明日」(『金子みすゞ全集』より) 春の朝 雀がなくな、 いい日和だな、 うっとり、うっとり、 ねむいな。 上の瞼まぶたはあこうか、 下の瞼はまァだよ、 うっとり、うっとり ねむいな。 足ぶみ わらびみたよな雲が出て、 空には春が. 中原中也 「また来ん春……」(詩集『在りし日の歌』より)

また来ん春…… また来ん春と人は云ふ しかし私は辛いのだ 春が来たつて何になろ あの子が返つて来るぢやない おもへば今年の五月には おまへを抱いて動物園 象を見せても猫にやあといひ 鳥を見せても猫にやあだつた 最後.

中原中也 「春と赤ン坊」「雲雀」(詩集『在りし日の歌』より)

春と赤ン坊 菜の花畑で眠つてゐるのは…… 菜の花畑で吹かれてゐるのは…… 赤ン坊ではないでせうか? いいえ、空で鳴るのは、電線です電線です ひねもす、空で鳴るのは、あれは電線です 菜の花畑に眠つてゐるのは、赤ン坊ですけど .

宮沢賢治 「春と修羅」(『心象スケッチ 春と修羅』より)

春と修羅 (mental sketch modified) 心象のはひいろはがねから あけびのつるはくもにからまり のばらのやぶや腐植の湿地 いちめんのいちめんの諂曲(てんごく)模様 (正午の管楽(くわんがく)よりもしげく .