【五月雨を降り残してや光堂】俳句の季語や意味・表現技法・鑑賞文・作者など徹底解説!!
明治期の正岡子規らに影響を与えた江戸時代の有名俳人「松尾芭蕉」。 松尾芭蕉は旅を愛し、旅行記とその時に詠んだとされる句をまとめた俳諧紀行文を多く書き残しています。 そのなかで最も有名なのが「おく
五・七・五の十七音に四季を織り込み、詠み手の心情や情景を詠みこむ俳句。 名句と聞くと、の作品を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか? 秋田便の飛行機から見る月山が好きです。 今日は残念ながら雲に隠れていましたが、松尾芭蕉の句を思い出しました。 雲の峰 いくつ崩れて 月の山 pic.twit.
季語この句の季語は 「五月雨(さみだれ)」 、季節は 「夏」 です。
「五月雨」とは、梅雨のこと。現代の感覚では梅雨と言えば 6 月ですが、旧暦では 5 月に降り続くものだったため、この名がついています。
意味この句を 現代語訳 すると・・・
「何もかもを朽ちさせてしまう五月雨も、この光堂だけは降らなかったのだろうか、金色の堂宇が光り輝いていることよ。」
「五月雨を降り残す」というのは、ややわかりにくい言い回しですが、 光堂だけは五月雨を降らせなかったということ です。
この句が詠まれた背景(※「おくのほそ道」・・・元禄 2 年 (1689 年 ) 、松尾芭蕉とその門人の河合曾良(かわいそら)が江戸を出発し、東北・北陸をめぐり、岐阜の大垣までの旅行をまとめた俳諧紀行文のこと)
芭蕉がこの句を詠んだのは、 奥州の平泉。(現在の岩手県)
奥州藤原氏とは、藤原清衡(きよひら)を初代とし、二代目基衡 (もとひら)、三代目秀衡 ( ひでひら ) を指します。
芭蕉が平泉の地を訪れたのは、奥州藤原氏が滅ぼされて 500 年後。
「おくのほそ道」の旅は、 奥州藤原氏や源義経への追悼の意味合いも込められていた と言われています。
「夏草や 兵どもが 夢の跡」
関連記事 【夏草や兵どもが夢の跡】俳句の季語や意味・表現技法・鑑賞文・作者など徹底解説!!五・七・五のわずか十七音に詠み手の心情や風景を詠みこむ「俳句」。 この十七音を極め、民衆文芸だった俳諧を芸術の域にまで高めたのが、かの有名な俳人「松尾芭蕉」です。 芭蕉が残した名句は数多くありますが、今回はその中でも有名なという句を紹介していきます。 \今日は #旅の日 / 松尾芭蕉が奥の細.
奥州藤原氏の事跡を伝える多くのものが往時の姿をとどめていないのに対し、 光堂が昔と変わらぬ姿であることの驚きがあったのでしょう。
「五月雨を降り残してや光堂」の表現技法
この句で使われている 表現技法 は・・・
切れ字「や」(二句切れ)意味は「…だなあ」というようなものです。切れ字のあるところにその 句の感動の中心がある といえます。
何がいいたいのかと言えば、ここ光堂だけは昔と変わらぬ姿をとどめているということで、 光堂の往時を伝える姿に作者は強く感動している のです。
また、この句は二句の「降り残してや」に切れ字がありますので、 「二句切れ」 の句です。
「光堂」の体言止め体言止めとは、 文の終わりを体言・名詞で終わる技法のこと です。余韻を残したり、印象を強めたりする働きがあります。
創建当時と変わらず、 金色に輝く光堂の姿に心を動かされたこと を体言止めで表現しています。
「五月雨を降り残してや光堂」の鑑賞文
ここで芭蕉が強く感じたのは、 世の諸行無常 であったでしょう。
古の兵どもが命を懸けて戦った土地も、いつしか夏草の生い茂る野に成り果てる、この世に変わらないものはないという 無常観が伝わってきます。
しかし、光堂は 500 年の時に耐え、黄金に輝いていました。
「夏草や」の句の無常観とはまたちがう、 時を超えて変わらないものもあったことへの感動が伝わってきます。
【七宝散りうせて珠の扉風にやぶれ、金(こがね)の柱霜雪に朽ちて、既に退廃空虚の叢(くさむら)となるべきを、四面新たに囲みて、甍(いらか)を覆うて風雨を凌ぐ。暫時(しばらく)千歳(ちとせ)の記念(かたみ)とはなれり。】
「五月雨を降り残してや光堂」の補足情報
曾良の旅日記の記述より『おくのほそ道』の旅には 弟子の河合曾良 が同行し、日記をつけていました。
実はこのことを裏付けるように、 『おくのほそ道』の本文中と実際の経堂の描写が実情とは異なっている のです。
実際に見ていれば間違いようがない像のため、見ていないとする 曾良の日記が正しい のでしょう。
芭蕉と光堂芭蕉は 「不易流行 (ふえきりゅうこう) 」 という考え方を持っています。
芭蕉が平泉の古戦場に関しては感極まったような俳句を残している一方で、 「暫時千歳の記念とはなれり。」 と素っ気ない文章で光堂を称しているのも、いつか光堂も古戦場と同じように変わっていくのだろうという考え方に寄るものでしょう。
芭蕉の言うとおり、まさに奥州藤原三代の時代から数えて 「千歳の記念」 になっているという面白い一幕です。
また、芭蕉は光堂を見て 2 つの俳句を詠んだことが曾良の日記に記されています。
1つ目が下記の 「五月雨や 降り残してや 光堂」の原型となった俳句 です。
「五月雨や 年々降るも 五百たび」
(訳 : 五月雨が降っているなぁ。毎年降っているのだから 500 回も降っているのだろう。 )
もう 1 つの俳句は おもむきが異なっているもの で・・・
「蛍火の 昼は消えつつ 柱かな」
この句は百人一首にも収録されている 大中臣能宣の和歌(下記) を元にしていると考えられています。
「御垣守(みかきもり) 衛士(えじ)のたく火の 夜は燃え 昼は消えつつ 物をこそ思へ」
作者「松尾芭蕉」の生涯を簡単にご紹介!
身分の高い裕福な家庭の子どもではなく、若いころから伊賀国上野の武士、藤堂 良忠 に仕えます。
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- 1 「五月雨を降り残してや光堂」の季語や意味・詠まれた背景
- 1.1 季語
- 1.2 意味
- 1.3 この句が詠まれた背景
- 2.1 切れ字「や」(二句切れ)
- 2.2 「光堂」の体言止め
- 4.1 曾良の旅日記の記述より
- 4.2 芭蕉と光堂
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