中原中也の詩「月夜の浜辺」の心情は?~鑑賞と解説~
ささやかであっても、どうしても捨てられない物に、出合ったことはありますか?なぜ、どのようにそれが宝物なのか、上手くは説明できないけれど、それを見つめるだけで心があふれるような……詩人・中原中也は、そんな言葉にならないような心情さえも、素手で...
月夜の浜辺
月夜の晩に、ボタンが一つ 波打際 なみうちぎわ に、落ちていた。
それを拾って、役立てようと 僕は思ったわけでもないが なぜだかそれを捨てるに 忍 しの びず 僕はそれを、 袂 たもと に入れた。
月夜の晩に、ボタンが一つ 波打際に、落ちていた。
それを拾って、役立てようと 僕は思ったわけでもないが 月に向ってそれは 抛 ほう れず 浪 なみ に向ってそれは抛れず 僕はそれを、袂に入れた。
月夜の晩に、拾ったボタンは 指先に 沁 し み、心に沁みた。
月夜の晩に、拾ったボタンは どうしてそれが、捨てられようか?
中原中也「月夜の浜辺」の解釈
「月夜の浜辺」。まずは題からして詩的ですね。
もう何もつなぎ合わせることがない、そもそも何物にも繋がっていない、ひとつきりのボタンです。
ささやかで、寂しくて、孤独なもの同志の、心の交流をここに感じることができます。
亡き我が子・文也に捧げる詩?
1936年(昭和11年)11月、中也の息子である文也が2歳で急逝します。中也はそのことで神経衰弱を昂じてしまいます。
同年2月に、中也は文也を思い出させる東京を離れ、鎌倉に転居します。いちじるしく体調を崩すなかにも、文也に捧げる詩集を編集しますが、その詩集が出版されるのを待つことなく、10月22日に中也は他界します。
1938年4月に、その詩集『在りし日の歌』は刊行されました。「月夜の浜辺」もそのなかに収められています。
それでも、文也への追悼詩として、中也は特別にこの詩を詩集に拾い上げたと考えられます。
同じくボタンが描かれている追悼詩も「夏の夜の博覧会は、かなしからずや」という、中也が文也を亡くしたばかりの頃に書かれた作品です。
【まとめ】詠み人知らずでも心に沁みる詩
私自身は、中也の悲しみを背景に感じつつも、そこに囚われないような読み方をしたいです。
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