クロムツ
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クロムツ

クロムツ[学名:Scombrops gilberti (Jordan and Snyder, 1901)]の写真付き図鑑。食べ方・旬・産地・加工品・特産品等の情報と解説も。若い個体は東北太平洋側、成魚は関東周辺の深海だけに生息している。関東では相模湾伊豆半島、伊豆諸島で揚がるクロムツともっと広範囲で...

漢字 黒鯥 Standard Japanese name / Kuromutu 由来・語源 ムツ科2種の中でも体色の黒いものという意味。クロムツの学名・和名は古いが、長い間ムツは1種類か、2種で意見が分かれていた。やがて1938年に1種になる。これが2種類に分類されるようになり、その黒い方であるという意味合い。ムツは、脂っこいことを「むつっこい」、「むつこい」、「むっちり」などというに由来。脂が多い魚の意味。 ちなみに国内のムツ科は3種になり、アフリカ沿岸にも1種いるなど種はもっと増える。 〈鈴木新氏(この方の来歴は不明)の調査によると神奈川縣三崎ではツノクチ、メダカ、キンムツの三型を分ち、 ツノクチは口が尖って、頭が小く、體に平みがあって丸い。 メダカは口が圓く、頭大きく、體は細長く、目が大きい。 キンムツは體形メダカに似て、色は白みがゝった銀色を帯び、味は良好で且つ最も淺所に生息するが、数量は多くない。 ツノクチとメダカとは同様に黑色であるが、ツノクチの方が稍や大きく、数量も多く味もよい〉 田中茂穂はムツ科は1種としながらも、3形を挙げている。また文意からするとキンムツ(金ムツ)はギンムツ(銀ムツ)の誤りの可能性がある。(分かりやすく改行) 『図説有用魚類千種 正続』(田中茂穂・阿部宗明 森北出版 1955年、1957年) 〈スズキ群ムツ科ムツ屬 ムツ Scombrops boops クロムツ Scombrops boops は本種の成魚である。若魚は體が褐色で、鱗は離脱しやすいが、老成すると體は青黒色となり、鱗は硬くなり、離脱し難くなる〉。『日本産魚類検索』(岡田彌一郎、松原喜代松 三省堂 初版1938) 『魚類の形態と検索』(松原喜代松 岩崎書店 1955)にはムツ1種のみ。『魚類大図鑑 南日本の沿岸魚』(益田一、荒賀忠一、吉野哲夫 東海大学出版会 1975)にはクロムツとムツがある。

Jordan David Starr Jordan〈デイビッド・スター・ジョーダン(ジョルダン) 1851-1931 アメリカ〉。魚類学者。日本の魚類学の創始者とされる田中茂穂とスナイダーとの共著『日本魚類目録』を出版。

地方名・市場名 ?

ツノクチ メダカ 場所 神奈川県三崎 参考 文献 ムツメ 場所 神奈川県小田原 参考 文献 クロムツ 場所 神奈川県小田原、東京都豊洲市場 参考 聞取 ロクノウオ 場所 宮城県仙台 備考 ムツと同じ。江戸時代、仙台伊達藩主は代々陸奥守であったため、「むつ」と呼ぶことをはばかって「ロクノウオ」といった。「ろく」は「六」であり「むつ」を表す。 参考 文献

生息域

海水魚。水深200-500m。 若い個体/岩手県、宮城県・[宮城県気仙沼]。 北海道羅臼、福島県、房総半島南東岸、相模湾、伊豆大島、伊豆半島東岸。

生態

基本情報

若い個体は東北太平洋側、成魚は関東周辺の深海だけに生息している。 関東では相模湾伊豆半島、伊豆諸島で揚がるクロムツともっと広範囲で揚がるムツを確実に区別して売っている。クロムツの方が圧倒的に高価で、魚類中もっとも高いもののひとつだ。 関東では冬の魚として珍重し、また春が近づくと膨らんでく本種の卵巣を「むつ子」としてよろこぶ。 本来は煮つけ用の魚だったがあまりの高騰に刺身として出されることが多くなっている。 珍魚度 一般的な感覚からすると珍魚だ。成魚は相模湾などでしか揚がらず、非常に高価である。主に寒い時季から春に揚がる魚だが、小売店などではめったに見かけない。

水産基本情報

市場での評価 入荷量は少ない。小型のものはまったく見られず、大型魚ばかり入荷してくる。市場ではムツとクロムツは明瞭に区別される。ともに高級魚だが、クロムツの方が高い。超高級魚。 漁法 延縄 主な産地 東京都、静岡県ほか

選び方

黒光りしているもの。触って張りのあるもの。

味わい

旬は秋から冬。春になり卵巣、精巣がふくらむと脂がやや落ちてくる。 鱗は軟らかく大きく取りやすい。皮は厚みがあって強い。 血合いが赤く、透明感のある白身だが、脂が身に混在するので白濁しやすい。熱を通しても硬く締まらない。 卵巣・白子ともに非常においしい。

むつ子はクロムツの子 晩冬から春になるとクロムツの卵巣が膨らんでくる。関東では本種の卵巣(真子)を珍重し、「むつ子」が固有名詞として使われている。卵粒が細かく、甘味があり、舌にねっとりとこくがある。

栄養

危険性など

食べ方・料理法・作り方 (基本はオススメ順掲載です)

クロムツの料理・レシピ・食べ方/煮る(鍋、煮つけ、芝煮)、汁(潮汁、みそ汁)、蒸す(清蒸、酒蒸)、生食(刺身)、焼く(塩焼き、幽庵焼き、西京漬け)、ソテー(ムニエル)、揚げる(フライ)

クロムツの酒塩鍋 脂が身にも皮下にもたっぷりあるので、ふんわりと膨らむ。柔らかい中に甘みと強いうま味がある。口の中で脆弱にとろけるようだ。 水洗いして三枚に下ろす。食べやすい大きさに切り、軽く湯通しして冷水に落とす。表面のぬめりを流し、水分を切る。これを濃厚な昆布だし、酒・塩の中で温めながら食べる。

クロムツのあら煮 2㎏以上あるのであらもたくさんでる。煮つけにしていちばんおいしいのもあらだと思っている。頭部周りの皮と身、胃袋や腸管など切身にはない味が楽しめる。 刺身や塩焼きなどにした残りの頭部、胃袋、中骨などを取り分けて置く。湯通しして残った鱗やぬめりを流す。水分をよくきり、酒・砂糖・醤油・水で煮る。

クロムツの潮汁 中骨つきの尾に近い部分の身や、腹骨周りの身を汁多目で煮て塩味をつけたもの。あっさりとした塩味で身はほろほろと柔らかい。汁が絶品である。 中骨と尾に近い部分の身などを集めて置く。食べやすい大きさに切り、湯通しして冷水に落とし残った鱗やぬめりを流す。これを水から煮出して酒・塩で味つけする。

クロムツの清蒸(蒸し魚) 脂ののった魚に蒸し魚は向かないと思ったが、意外というかびっくりするほど味わい深い。身も皮も非常に柔らかくスプーンで食べられるほどだが、濃厚なうま味がある。 水洗いして二枚に下ろす。骨つきの方を切り身にする。皿に盛って日本酒を振り、10分ほど蒸す。中国の甘い醤油・魚醬・紹興酒・砂糖を煮立たせたたれをかける。上に香りのある野菜をのせて煙が出るくらい熱した油をかける。

クロムツの酒蒸し 酒をかけて昆布の上に乗せてもしただけのものである。しっとりと箸でほぐれるほど柔らかい。ポン酢などで食べると上品な中に豊かな脂を甘味がある。 水洗いして三枚に下ろす。切り身にして昆布を敷ききのこなどを添えて酒を振って10分弱蒸す。終いに青みを加える。

クロムツの刺身 やや単調な味ではあるが、脂の甘味があり、舌の上で身の表面が溶けている感覚がわかる。ほどよく繊維質で食感もあり、とてもおいしい。 水洗いして三枚に下ろす。腹骨・血合い骨を取る。皮を引き、刺身に切る。

クロムツの幽庵焼き(祐庵焼き) 漬け魚にしても締まることがなく柔らかい。おいしい魚だが、味は少し単調である。これを醤油など発酵調味料の力でうま味が倍する。 水洗いして三枚に下ろし、切り身にする。振り塩をして少し置き、表面に出て来た水分を拭き取る。これを酒・みりん・醤油同割りの地に半日程度漬け込む。

クロムツのみそ漬け(西京焼き) 非常に上質でくせのない味わいだが、脂が乗っているだけで特徴がない。これを京都産の白みそと合わせることで味に奥行きを持たせる。 水洗いして三枚に下ろす。切り身しにて振り塩をして少し置く。表面に出て来た水分を取り、白みそ・みりんを合わせた地に1日以上漬け込む。

クロムツのムニエル 多めの油でソテーしただけなのに、表面が香ばしい板のように変容する。これが実に香ばしく、内側は豊潤でうま味がある。非常においしい。 水洗いして三枚に下ろす。塩コショウして小麦粉を薄くまぶしてじっくりソテーする。

クロムツのフライ 切ると脂がとろけ出すが、すぐ身にもどって消えてしまう。口に含むとこの液化した脂が口に広がる。非常に濃厚でゴージャスなおいしさである。 水洗いして三枚に下ろす。尾に近い部分を切り身にして塩コショウ。小麦粉をまぶし、溶き卵をからめパン粉をつけて揚げる。

好んで食べる地域・名物料理

東京都をはじめとする関東周辺。

加工品・名産品

釣り情報

水深200〜500メートルを胴つき仕掛けか天秤しかけ、餌はイカの短冊でねらう。

歴史・ことわざ・雑学など

ムツ野郎 口腔内が黒いことから。要するに腹黒いという悪口だ。

参考文献・協力

協力/野圭太さん(丸の野水産 北海道羅臼町 ■https://www.tabechoku.com/producers/27483) 『日本産魚類検索 全種の同定 第三版』(中坊徹次編 東海大学出版会)、『新釈魚名考』(榮川省造 青銅企画出版)、『魚と貝の事典』(望月賢二 柏書房)、『魚河岸の魚』(高久久 日刊食料新聞社 1975)、『中深層性深海魚ムツ・クロムツの再生産機構』(日本大学 生物資源科学部 海洋生物学科)

クロムツを使った寿司

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