卒業式や謝恩会、スライドショーなどでの音楽利用に必要な手続きとは
まもなく卒業や卒園のシーズンとなりますが、卒業記念DVDを作成したり、祝賀パーティーや謝恩会、茶話会などでスライドショーを作成して上映したりする場合も多いと思います。そのパーティーやスライドショーなどに欠かせないのが、会場や動画を盛り上げて
例えば、卒園ソングの定番である名曲「にじ」(作詞:新沢としひこ/作曲:中川ひろたか)は、作詞・作曲のお二人ともJASRAC信託者ですので、著作権者はJASRACです。また、こちらも定番曲である名曲「ビリーブ」(作詞・作曲:杉本竜一)、「さよならぼくたちのほいくえん・ようちえん」(作詞:新沢としひこ/作曲:島筒 英夫)、「おおきくなったよ」(作詞作曲:入倉都)についても同様です。つまりこれらの曲を利用するためにはJASRACからの許諾(使用料支払い)が必要です。一方で、株式会社ベネッセコーポレーションが提供する「たいせつなともだち」(作詞:逸見龍一郎/作曲:古川竜也)、「キラリキラリ」(作詞:Rico/作曲:牧野奏海)はJASRAC管理曲ではなく、ベネッセコーポレーションが示す条件に従って無許諾で利用できるとされています。
さらに、音楽の場合はこの著作権だけではなく「著作隣接権」も大きく関係してくるのが特徴です。音楽に関係する著作隣接権は2種類あり、CDや配信音源を複製(プレス)する基となるマスター音源(一般的には「原盤」と呼ばれます)を制作した者が有する「レコード製作者の権利」と、その原盤に収録されている音を演奏したり歌ったりした者が有する「実演家の権利」があります。
実際には、実演家の権利(実演家人格権を除く)については、原盤を制作する際に、その原盤を制作するレコード会社やレーベル、プロダクション、芸能事務所などが実演家から譲り受けているため、このレコード会社などが有するレコード製作者の権利と実演家の権利が融合した、一般的に「原盤権」と呼ばれる権利をレコード会社などが有している状態が多いです。
つまり、 音楽を利用するためには、JASRACなどの著作権管理者からの許諾が必要であり、さらに市販CDや配信音源を利用する場合はレコード会社などの原盤権管理者からの許諾が必要 となるのが原則です。
許諾が必要な音楽利用方法
ただし例外があります。表中の (A) と (B) は特定の条件下では許諾不要となります。詳しくは後述しています。 利用方法 著作権 原盤権(著作隣接権) 卒業(卒園)式で音楽を流す 演奏権(A) なし 祝賀会、謝恩会、茶話会などで音楽を流す 演奏権(A) なし 卒業(卒園)式や祝賀会などの様子を撮影したDVDなどを配布する 複製権 複製権 (B) 式や祝賀会などで上映するスライドショーにBGMを入れる 演奏権、複製権 複製権 (B) スライドショーは無音で音楽を同時に流す 演奏権(A) なし配信音源は基本的には利用できない
しかし、どのサービスにおいても、基本的には利用規約により個人利用や非商用利用に限定されています。よって、例えば幼稚園・保育園の幼児と保護者全員が聴くようなシーンというのは”個人利用”には該当しないと考えられますので、配信音源をBGMに利用したりDVDに収録するというのは規約違反に該当する可能性があります。
配布DVD用の音源利用許諾が得られない場合も
その撮影を専門の業者が行う場合でも、あるいは保護者側の有志が撮影・編集して配布する場合でも、音楽の“複製”利用が行われるため、先述の通り著作権者と原盤権者から許諾を得る必要があります。
しかし、実は 一部の大手レコード会社はこのようなDVDへの利用(複製)を認めていません 。この場合、問い合わせても複製の許諾が得られる可能性は低く、 配布DVDを制作する場合にはBGMとしてそのレコード会社管理の音源は使えない 、ということになります。
私的使用には該当しない
しかし、私的使用とは、著作権法30条1項を基にすると「家庭内またはそれに準ずる範囲で使用するために、使用する者自身が複製する」場合に限られており、卒業(卒園)の式典や茶話会・祝賀会などの様子を撮影して配布する場合や、そこで上映するために制作するスライドショーは、家族以外の数十人が見るものであると思いますので、 決して“私的使用”ではありません 。
無許諾で利用できる場合もある
参加費不要の集会で、DVDなどには収録せず、当日会場で流すだけの場合 自分たちで演奏する場合CDなどの音源をそのまま利用することは認められない場合もありますが、そのような場合でもその音源を使わずに新たに演奏・歌唱するのであれば、複製には該当しませんので原盤権者からの許諾は不要です。なお、 この場合でもJASRACなどの著作権者からの許諾は必要 ですのでご注意ください。
違法状態のものを子どもたちに残さないように
しかし、だからといって(著作権法上許された場合を除いて)著作権者や原盤権者に無断で複製や演奏を行なって良いものではありません。卒園や卒業の記念として作成するものは、保護者にとっても大切なものですが、同様に被写体となっている子どもたちにとってもとても大切なものです。その中に 違法であるおそれのあるものが含まれているのは、決して望ましいことではありません 。
適切な権利処理を行う、あらかじめ利用が許諾されているもの(フリー音源など)を利用するなど、 子どもたちに胸を張って見せることができるものを残していきたいですね 。
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